遊び屋〜本気で遊ぶ楽しさ、忘れてない?〜

でずな

1話 遊び屋の再開



『レグニア王国10年続いた戦いに大勝利!!』


「号外ぃ〜!! 号外だぁ!! とうとう戦争に勝ったぞ!!」


「なんだって!?」


「それは本当なのかい!?」


 戦争にて食料の底が見え、貨幣価値が下がり、もう負け戦だと決めつけいてた国民は、『勝利』という予想外の結果に涙を流し喜び合っていた。

 国はお祭りムード。

 今犯罪を起こしたとしても、誰も咎めないだろうと思うほど浮かれた空気だ。


 そんな中、バナナを齧りながら高台からその様子を眺めている男と、それを呆れた様子で見る男が。


「ふぅ〜ん。勝ったんだ。ならこれからがっぽり儲かりそうだな」

 

「おいレン。戦争が終わったんだぞ? なのにお前ってやつは……。本当に金にがめつい奴だな」


「そりゃあ、金がないと何もできないだろ。戦争が終わったのは嬉しいけど、戦線は遠く離れた場所じゃないか。俺たちは食べ物が枯渇することなんてないから、どうでもよくないか? てかケイも金にがめついだろ。俺だけ金金うるさいやつみたいのやめろ」


「なんかすまん」


 レンはふん! と反抗期の子供が親にするようなぶっきらぼうな態度を取り、再びバナナを齧り始めた。


 ……こいつ意外と俺のこと見てるんだな。


 ケイは隠していたことを言い当てられ、少し嬉しく思った。


「……どうする? 戦争が終わったんだ。お前が言ってる通り金もがっぽり儲かりそうだし、いい加減再開するか?」


「当たり前だろ。戦争で疲弊した心を俺らがで癒やしてあげようじゃないか」


「悪いやつなのかいいやつなのか……」



 俺はいつでも戦地に向かえるよう、最前線の少し後方に配属されていた。

 仲良くなった仲間達が次々と戦場に向かい、次は俺の番だと思っていたのだがそんな時に戦争が終わった。


 上の命令で任期満了になり、故郷に帰ることができたのは戦争が終わってから三ヶ月後のことだった。


「それ意気揚々に帰省したが、家に帰ったらそこには知らない人が住んでて両親は死んでいた。……これであってます?」


「えぇ、はい。それであってます。……遊び屋さん。俺はですか?」


 こんなの聞かれるまでもない。合格だ。

 戦争帰りの人を癒やすのが、元よりレンと俺の目的。

 それにあんな話を聞いてこの人のことを不合格になんかできない。


 ここを尋ねるまでどれだけの苦労をしたのか……。人間だと思えないような黒ずんだ隈、首元を引っ掻いた傷、そしてガリガリのやせ細った体がそのすべてを物語ってる。


「不合格」


「ってレン! この人が不合格になる要素なんてないだろ!」


「はぁ〜お前な……。わかってるだろ? 俺らは仕事でやってるんだ。それ相応の対価を用意できないんなら受けるまでもないだろ。金が大好きなお前がそんな当たり前の事俺に聞くなよ」


「お金なら任期満了になったので、600万リースほどあります。……すべてを差し上げます。なのでどうか、どうか合格に……」


 600万リースもあればこの国の一等地を買える。

 一介の兵士がもらうような額じゃない。

 この人、軍隊の中でもかなり上の人間じゃ……。


「あぁ〜不合格? そんなものにするわけ無いでしょう!! 今のはあなたのことを試したんですよ。ははっ!! 申し訳ない。もちろん合格です。この遊び屋必ずやあなたの心を癒やし、以前のような……いいえ。以前より元気にして差し上げます」


 レンはさっきと打って変わって、ここぞとばかりに早口で依頼を受けることを伝えた。その額には冷や汗が浮かんでいる。

 

 やっぱ、レンもこの人がどれだけの人物なのか気づいたんだな……。


「ささっ! 今日のお話はこのくらいで。次会うときはあなたの心を癒やすときです」


「お、俺は助かるんだよな!? 俺は大丈夫なんだよな!?」


「ええ。もちろん」

 

 依頼者が帰り少しして。


「俺って天才かもしれない」


 紅茶を飲み、休んでいた俺の前に鼻を高くしたレンがやってきた。


「確かに流石の俺も今日の頭のキレ具合には感服だ。いつも揚げ足ばかりとってたレンがここまで成長して……。泣けるなおい!」


「ふふっ。だろ? やっぱ、漫画で見たやつみたいに金を催促したのが決め手だよな?」


「あの立ち回り、いつも読んでるあのくだらない絵から学んだのか……。俺も読んでみようかな」


「おっ! やっとその気になったか! 初心者にオススメするんならやっぱり最近話題のジン先生だな。新人だというのに、読みやすくて面白いことこの上ない!」


 グッと握りこぶしをつくり俺のことを見る瞳から、これからナンパに行く男のようなたくましいものを感じた。


「まぁとにかく、戦争が終わってようやく仕事が来たんだ。早速明日に向けて作戦でも練ろうじゃないか」


「ったく。そんなことより、さっきお前も感謝してくれた通り俺が催促したおかけで大金が手に入るんだ。ぱぁ〜っとやっちまおうぜ!」


「? 俺は大金が手に入るから感謝したんじゃなくて、依頼者が軍隊の中でかなり上の人間じゃないかと任期満了の金から探ってくれたから感謝したんだぞ」


「…………ま、同じもんだろ」


「いや全然違うと思うが」


「そんなことより! 何頼む? ピザ? それともピザ?」


「はぁ……ピザでいいんじゃない?」


 まぁこいつが依頼者のことを知ったって、仕事内容は変わらないからいいか。


「そういや明日の作戦どうする?」


「んぐ〜? ごっくん。んんっ。そりゃあこの遊びの達人にバッチリ任せて。ケイはサポートしてくれるだけでいいから」


「本当か?」

 

 以前、同じようなことを言って見事に失敗したので説得力皆無だ。


「もぢろん。むしゃむしゃ……。まかへなはい! あっ、このピザ初めて見た。なぁこれ新作かな?」


 本当にこんなやつに任せて大丈夫か?

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