〜序章〜      全ての始まり。2

将門の居館へと戻ると、大広間には既に将門が二人を待っていた。



『父上、アヤメを連れて参りました。』


『お待たせ致しまして、申し訳御座いません。』



部屋に入る前に、縁側越しに頭を下げた。



『良い良い。 急な呼び立てで有ったからな。

さあ、二人共此方へ参れ。』



将門に言われて、やっと大広間へと入った。



『将門様、此度のお呼び出しは??』



『ああ……。

それよりも、まだ儂の事を将門様と呼ぶか。

父上で良いと申したのに。』



将門はアヤメの事を、実の娘の様に可愛がっていた。


だから、将門様と呼ばれる事に、少し寂しさを感じていた。



『も、申し訳御座いません……。

ですが、将門様は私の命の恩人です。』



『そんなに、気を使わずとも良いのだがなぁ……。』



『ほら父上、アヤメが困っておりますよ??』



『あ、ああ。 すまぬな……。』



『父上、此度のお呼び出しとは??』



将門は、主旨を思い出したかの様に手を叩いた。



『そうじゃ! 此度、藤原忠平様にお仕えすべく京の都に登る事となった!!

そこで、アヤメも京の都に連れて行こうと思ってな!』



『き、京の都……。』



『何か記憶を取り戻す手掛かりになるかも知れぬ。』



『父上、私も連れてって下さいませ!』



『五月、遊びでは無いのだぞ?

アヤメを連れて行くのも、アヤメの為を思っての事だ。』



『そんなぁ〜〜。』



五月は脚をばたばたして、不満そうな顔をする。



『まあ、そう怒るな。

次回は五月も連れて行くからな。』



『ぶーー!』



五月は如何にも不満そうに、不貞腐れた顔をする。



『わ、私が京の都に??』



『そうだ! 出立は明後日。

異論は無いな?』



『も、勿論ですっ!!

有難う御座います!!』



『気にするな。』



『私なんかの為に、お心遣い感謝致します。』



アヤメは深々と頭を下げた。




『だから、その仰々しい姿は辞めてくれ。

儂は、娘と思っておるのだからな。』



『あっ!!』



アヤメは、しまったと頭を掻いてしまった。



それを見て、笑顔になる将門。




アヤメは、その優しさに本当に感謝した。



そして、アヤメの宿命の歯車が動き出そうとしていた。




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