身内の裏切りに遭い、絶体絶命の窮地に追い込まれてしまった、ふたりの暴力団員の物語。
血湧き肉躍るバイオレンスが山盛りの、任侠もの小説です。
何がすごいってこの殺伐っぷり!
冒頭から切った張ったの大立ち回り、任侠ものならではのこの荒々しい物騒さがたまりません。
結構血みどろの大惨事なんですけど、でもゴアやスプラッタという感じではなく、煤けた暴力性が際立っているところも素敵。
とはいえ、一番の魅力はやはり物語、すなわち九條さんと権藤さんの関係性です。
絆、なんて言い方をしてしまうとかえって安っぽくすら思えてしまうほどの、信頼と憧れとその他さまざまな感情に裏打ちされた相手への思い。
その重さと深さが、文章越しにビリビリ伝わってくるところがもう大好き。
ギリギリの状況が生む説得力というか、生き死にのかかった場面だからこそと思わせてくれる物語でした。