もふもふライフはウサ娘と!?
かがみ透
第1話 もふもふ育成アプリ
【登場人物】
アプリの文字:常にハイテンション
ウサギ:本物のウサギ、見知らぬ女子、のちに男の娘
【台本】
*バイトの帰り道、
「なっ、……なにぃーっ!?
『別れよ』
壮:
「なんで急に!? い、いや、落ち着け、俺! 読み間違いかも知れ……いや、たった三文字を読み間違えるわけないか。
ここは、あたふたせずに『どんな時も俺は大人でしょ?』って
俺って意外と、大人でしょ〜? って」
壮の文字:(余裕のある言い方で)
『なんで急に? 俺、何かやらかしたかな?』
壮(心の声):
「彼女とは、つい先週の土曜日にお台場で遊んだばかりで、俺に不満があるようなそんな風に思っている様子は
……と、思う。
……が、自信がなくなってきた」
壮の文字:
『もし何かやらかしてたなら言って。悪いところは直すから』
清夏の文字:(明るく)
『壮には別に不満はないけど、K大生にコクられちゃって。もう返事しちゃったし』
壮:(怒りより驚きの方が強く)
「え? なに言ってんの、こいつ。俺というものがありながら、K大生なんかに『告られた』ってだけで?」
清夏の文字:(ウキウキ)
『壮もそこそこイケメンだけどさ、その人は誰が見てもイケメンなんだよ。しかもK大生! 合コンで話弾んじゃってさ』
壮:
「まあまあな大学の俺らよりもずっと頭が良くてしかもイケメン……。
K大ってことはお坊ちゃん……ってことは、ハイスペック王子様……。
女って、結局は、白馬のハイスペック・イケメン王子様を待ってるのかよ……。
今後の就職も何もかも、横からハイスペック王子に奪われてく暗示みたいで、ショックはマシマシだぜ!
この先も女子と付き合うことがあったとしても、結局はハイスペック王子に奪い取られていくのか……!」
(トボトボと歩く)
(夕焼けに照らされた河川敷では、キャッチボールをしている小学生男子たち、敷物を敷いて酒盛りをしている大人たちがいる)
壮:(ため息をついて空を見上げる)
「バイト帰りに見るいつもの夕焼け色に染まってるこの風景も、今はどこか物悲しく見えるなぁ。
うっすら下の方に見える紫色、あれが徐々に空を覆い尽くし、暗闇に染めるんだ。
その絶望を、アパートで一人で迎えなければならないのかぁ……」
(足を速める)
壮:(泣きそうになるのをこらえて)
「ううう」
*壮のアパート。秀が遊びに来ている
壮:
「ちきしょー! 俺のいったいどこが不満だったんだよぉ!
カオが王子じゃないからか? K大じゃないからか?
男の良さはそこで決まるのかよ!」
「そうだったんじゃね?
いきなり呼びつけるから大したもん持って来られなかったけど、缶ビールと柿の種、するめ、コンビニで買ったキャベツの漬物、胡瓜のぬか漬け、ソーセージの盛り合わせ」
(座卓に並べていく)
壮:
「うわっ! 何お前こんなに買ってきてんの?」
秀:
「安心しろよ、買ってきたのは漬物とソーセージだけだから。後は、家にあったのを持ってきた」
壮:
「いいなぁ、地元は。買ったやつは半額払うよ。
(小銭を置く)
これで足りるか?」
秀:
「オッケー」
壮:
(冷蔵庫からペットボトルのオレンジジュースを出した)
「いいなぁ、秀は。もう飲めるんだもんな」
秀:
「悪いな。俺だけ缶ビール買ってきちゃって」
壮:
「いいよいいよ。じゃあ、とりあえず、乾杯しようぜ!」
秀:
「おう」
(壮と秀、グラスと缶をカチンと合わせる)
(秀はビールを飲みながらテレビを点け、美少女アニメを見る)
壮:
「そうか! 俺が飲めないからか! 同い年でも清夏はハタチ過ぎてるからもう酒飲めるけど、俺は早生まれだから来年まで飲めないし!
イケメン・ハイスペックK大王子は飲めるのか。くっそー、なんもかんも俺を上回ってんなー!」
秀:
「だからお前もさー、リアルなんかやめて二次元にしろよ。二次元は裏切らないんだぜ。しかも、リアルよりカワイイし」
壮(心の声):(真面目に)
「秀は高校の時、『好きな人が出来たから』とだけ言われ、三週間で別れた経験を持つ、今の俺の気持ちを一番わかってくれる貴重な友人だ。
だけど、そのアドバイスはちょっと違う」
壮:(ため息まじりにポツンと)
「はあ、……癒されてぇな」
(放心状態でジュースを一口飲む)
壮:
「誰かに優しくされたい」
秀:
「うんうん、そうだな。
(テレビを見て)あははは!」
(その後、秀が帰った後、食べ残しを片付ける)
壮:
「あ、そういえばソーセージ、俺、一口も食ってなかったわ……」
(ため息)
(スマートフォンを開く)
壮:
「わかってはいたけど、……清夏からは何も来てないなぁ」
(ため息)
(そのままなんとなくネットサーフィンをする)
壮:「さっき秀は、『そんな時は美少女育成ゲームがお勧めだぜ!』なんて勧めてくれたけど、そういうんじゃないんだよなー。でも、ま、気晴らしになるなら……。
あった、これか。
美少女が成長していって、可愛い服とか買ってあげると喜んでくれるのか。二次元だとエモーションかわいいな。
しっかし……、服買ってあげるのって課金じゃねーか! 無料でできるヤツないかなぁ」
(育成ゲーム系をスクロールして眺めていて、ふと指が止まる)
アプリの文字:(ハイテンションなボイス)
『もふもふ育成シュミレーションゲーム!』
『あなたの日常に癒しを! 何が来るかはお楽しみ。成長させると理想の姿になるよ!』
壮:
「理想の姿って、カノジョにでもなってくれるのかよ?」
(ふっと、乾いた笑いがこぼれる)
(リアルな動物イラストに目が留まる)
「絵は力入ってんなー。動物イラスト、すげえリアル。
……ああ、猫は可愛くていいな。小学生ん時、飼ってたしな……。
猫がいてくれたら、また違うかもなぁ……」
*朝
(カーテンから差し込む光で目が覚める)
(壮、床から身体を起こす)
壮:
「う、う〜ん……ああ、寝落ちしたのか。服のままだし、床に横になっていたせいで、
えーと、スマホ、スマホ……あった」
壮:(大きく伸びをする)
「ふあ〜あ(
……ああっ!?」
(そのまま、しばらく身動き出来ずに、ラグの上にちょこんと座っているものを
(黒いつぶらな瞳と目が合う)
ウサギ:(キョトン)
「……?」
壮:
「……わぁっ! なっ、なんだ!? ウサギがいる!?」
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