第10話


  *


 真海奈からメッセージが届いた。


『うん、また話そうね!

 そういえば、今度の休日は空いてるかな?

 友達として、武尊くんと遊びに行きたいな。

 ダメ、かな?』


『いいよ!

 どこに遊びに行くかは学校で会ったときに相談しよう!』


『わかった。

 楽しみにしてる。

 また学校でね』


『うん、おやすみ』


『おやすみなさい』


  友達として、か。


 まあ、いきなり告ってきたことにはビックリしたけど、こんな会話も悪くないな。


「満喫してるじゃないですか」


 桜舞が僕のスマホに映るメッセージを確認する。


「そうか?  普通だろ」


「人生初の経験なのに感動が少ないですね」


「これは誰もが通る道だから、そんなに感動することはないと思うけど」


「通らない人は結構いると思うんですけどね」


「それに同意したところで、なにかが変わるわけでもないし」


「いや、今この瞬間に変わったんですよ。間違いなく、ね」


「まだ真海奈は友達でしかないのに、そこまで言う?」


「言いますよ。わたしは兄さんのサポートをしたいだけですから」


 桜舞は確信をもって言う。


「いずれ兄さんはわたしに、ものすごく感謝しますよ」


「そうだといいんだけどな」


 まあ、一区切りが付いたわけだし。


「じゃあ、寝るか。僕は自分の部屋に戻るよ」


「はい、お疲れさまでした。おやすみなさい」


「おやすみ」


 これで一日が終わったんだ。


 明日も、 無事に学校へ行けるといいんだけど。


  *


 僕たちは一年A組の教室に入る。


 桜舞はできた妹だ。


 僕が教室に入るのを不安がっていると、 ちゃんとそばにいてくれる。


 だから、もう、不登校を心配する必要はない。


 不安に耐えられなさそうなときは桜舞のことを思い出す。


 そう、桜舞がいるはずなのに、どうして、こんなことになってしまったのだろう……。


「神憑先輩ですか?」


 目の前に見たことのない女の子が現れる。


 A組の教室にはいなかったはず……誰だ?


 今は早朝だ。


 僕と桜舞とその子以外は教室にいない。


 いったい、なにが目的で、この教室にいるんだろうか?


「あたしは火花ひばな萌瑠もえると申します。神憑先輩に聞きたいことがあって来ました」


 その子は子どものような純粋無垢な目をしていた。


「単刀直入に聞きます。あなたの病気は、なんですか?」


「どうして病気のことを聞くの?」


「一年前、あなたはある病院で入院していた。普通の病院だったら、普通の患者だったら、退院するまでに、そんなに時間はかからないはずですよね? 約一年も、なにしてたんですか?」


「それを聞いて、どうするつもり?」


「いや、ですね……伝播高校の二年生の先輩たちが、あなたに関わらないほうがいいと言っているのです。どうして、そこまで嫌われてるんですか?」


 僕の心にトゲが刺さった。


 まだ話は続くのだろうか?

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