10話.[これはおかしい]

「暑いなあ」

「うん、今年は特に酷いねぇ」


 歩いているだけで汗が出てくるなんて異常な暑さだ。

 走っている状態なら分かるけど、ただ静かに自分のペースで歩いているだけなのにこれはおかしい。

 でも、まだまだこれからなんだよなあ、それどころかこれから更に暑くなるわけで考えただけでうへぇとなった。


「暑いとまりんが嫌がりそうだから微妙だなあ」

「そりゃ汗くさいかもしれないからあんまり近寄ってほしくないでしょ」

「だから今年の夏は家で過ごそう、そうすれば手を繋いだり抱きしめたりだって簡単にできる」

「そうですねー」

「本気で言っているからね?」


 だろうね、そして私も彼と決めているからだとか考えて受け入れるのだ。

 だんだんと止まらなくなってキスなんかもしてしまうかもしれない。

 ……するなら夏祭りが終わった後とかがいいな、いつものように話した後で普通にしてしまうのは違う感じがする。


「僕はまりんが好きなんだよ」

「わ、分かったから、他にも人がいるところでやめてよ」

「じゃあ適当に対応をするのもやめてほしい」


 もうこういう考えになってしまっている時点で私も同じようなものなのだ。

 で、そうなると今度はいつ言うべきだろうかという話になる。

 昨日だってね、そのことを湯船につかっているときとか、ベッドに寝転んでいたときに延々と考えていた。

 だけどさ、そう都合よく出てくれるわけではないのだ。


「た、たいき」

「なに?」

「好きっていつ言ったらいいの?」

「え、いつでもいいけど、というかそれって……」

「……まあ、似たようなものでしょ」


 いつまでもこの曖昧なままにしておくわけがない。

 関係が変わらないと○○だからと片付けて行動をすることもできない。

 そういうのは嫌じゃん? 関係が曖昧なばかりに我慢ばかりの時間になったら多分あー! と叫びたくなるだろうから自分から変えていくのだ。


「じゃあまあそういうことでよろし――あれえ?」

「いますぐに僕の家に行こう」

「元々そのつもりでしょ? あ、信号が変わったから行こうよ」


 なんかいまの私達みたいだな、やっとスタートラインに立てていまからスタートできたみたいな感じだ。


「家に着いたら昼寝をしようか、もちろん手を繋ぎながらね」

「はいはい、それなりに歩いて疲れたからそれでいいよ」

「あ、だけどテンションが上がりすぎて寝られなさそう」

「はは、君はずっとそのままでいてよ」

「当たり前だよ、僕は僕なんだからこのままだよ」


 それであってくれればこちらのなにかが変わることはない。

 とにかくこの関係でいられる期間をどんどんと伸ばしていきたかった。

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