第2話   優しいひとみ〜つけた!


クラスを探すため、組み分けの表を見ながら右往左往していた私は、つい勢いあまって

『 ドンッ 』「 あ、ごめんなさい! 」誰かとぶつかってしまった。


焦ったりすると前が見えなくなってしまう性格だから、気をつけていたのに、結局、初日からやらかしてしまいました。


その拍子にもらったプリントをブチまけちゃって、それでもって廊下を歩く生徒達に踏まれる踏まれる、かわいそうなプリントさん、ごめんなさい…


最後の一枚を拾おうと短い腕を伸ばした。


『 よいしょ 』


「 あ!」


プリントが自ら私の目の前に浮遊した、なわけないです。誰かわからないけれど拾ってくれたみたいで、それが私の目の前に差し出された。


「 これ、君のだよね 」


「 あ…は、はい 」


「 足跡ついちゃったね、端っこ破けてるし… 」


「 私、ドジなので…は、はは… 」


「 同じC組だね… ちょっと待ってて… 」


「 …はぃ?…」


その人は何やら自分の封筒をのぞいている。すると、中から一枚のプリントを引き抜いた。


「 それ、貸して?」


「 あ… 」


その人は私の手から足跡付プリントをつまみ上げると、それを自分の封筒にしまいこんだ。


「 君には綺麗なほうが似合うから、僕のと交換…今度は落とさないようにね 」


「 あの…… 」


そう言いながら笑顔で私に綺麗なプリントをくれたその人は、あっと言う間に行ってしまった。


なんて優しい人…


綺麗なほうが似合う…って言われた。


少し舞い上がった私は、廊下でそのまま余韻に浸っていたのでした。


「 新入生の方!早く教室へ入ってください!…今から説明があります… 」


「 は…はい、すみません… 」


いつの間にかみんな教室へ入ってるし、残るのは私ひとりじゃない。


とりあえず入ってみましょう、ピタピタピタ。


知っている人が誰もいませんね~ 当然です。


前の中学校からこの場所は500kmは離れていますから、いたら怖いわ。


父の転勤に伴い遠くの地から引っ越してきたのですから、誰ひとりとして知り合いなどいないはず。寂しい限りです。


それよりも、さっきの優しい人がとても気になる、理子です。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る