第20話 出会い 

正直いってここでの生活は居心地は悪くないのだが、毎日が辛すぎる。


テレビを見ても化け物しか出て来ない。


物凄く、気持ち悪い化け物がフリフリスカートで歌を歌っている。


多分、これがアイドルなんだと思う、最悪だ。


お笑い芸人は少しはまともだけど...ブサイクだ。


これって凄く致命的なんだ。


ご飯も美味しいし、待遇も良いんだけど、いつも周りには化け物しか居ない。


一番近い状態だと、世界がゾンビだけになりました、だけど、このゾンビは凄く優しく襲ってこない。


そんな感じ。


そんな中に居たら、美味しい筈のご飯も美味しくない。


昨日なんて夜中にトイレに行った帰りに化け物を見かけて、怖さで自室のベットに潜り込んだ。


まぁ、少しは慣れてきたんだけどね。


そしてこの世界にきて3日目。


僕は学園に通う事になった。


まだ、時期は4月、新入生とそんなに学力の差はないだろう。


だが、物凄く苦痛だ、やはり若い化け物しかいない。


たちの悪い事に声は別に化け物の声ではなく普通に聞こえるんだ。


【周り】


「凄い美少年が歩いているよ、、あれうちの制服じゃない」


「転校生なのかしら、、あんな美少年が居たら見落とすわけないよね」


「私狙っちゃおうかな」


気持ち悪い。


学校につくと職員室に立ち寄った。


担任を紹介されて教室にいった。


簡単に自己紹介を済ませて席に着いた。


僕に向けてくる目が気持ち悪い。


好意を持ってくれているのは解るんだけど。


だけど、どうしても受け付けられない。


良く話しかけてきてくれる。


これが普通の人なら、嬉しいのに体が拒絶反応をおこす。


昼休み、食事を誘われたが僕はやんわりと断った。


食欲も無いけど、何か食べなきゃ、僕は牛乳とパンを買った。


食べる場所として、化け物を見ないですむスポットを捜し歩いていた。


裏庭に人が余り居ない場所を見つけて座ると、反対側にスカートが捲れているのにお弁当を頬張っている女の子が見えた。


あれっ 普通の足に見える。


まじまじとパンツから先に見える太腿をみた。


化け物には見えない綺麗な太腿だった。


そこから上へ顔を向ける。


そこに居たのは、前髪ぱっつんの凄い美少女だった。


もとの世界のアイドルだってここまで可愛い子は居ないと思う。


幾ら、男女比が1対10でもこの子位可愛かったら、さぞかしモテるだろう。


元の世界で、1万人に1人というアイドルの女の子が居たが、確実に、それ以上可愛い。


ここまでの美少女だったら1対10の世界でもそのハンデなんて吹き飛ばすだはずだ。


だが、どうしても友達になりたい。


化け物しか居ない世界で初めてみた人間に見える女の子。


今迄見た事が無い程可愛い子。


心臓はドキドキしている。


この子に嫌われたら、そう考えるだけで不安だ。


もしかしたら、この世界で1人しか居ないかも知れない、僕から見た可愛い女の子。


「駄目だよ、可愛い女の子がパンツ何て見せちゃ」


何で僕はこんな声の掛け方をしたんだよ。


ほら、彼女はキョロキョロと不審者を探し出した。


そして、目があった。最悪だ。


だが、変態と思われたくはない。


ここはこのまま押し通そう。


「だから、女の子がパンツなんか見せてたら駄目だって」


そういって足を閉じた。


周りからクスクスと声が聞こえる。


女の子は顔を真っ赤にしながら


「ごめんなさい、不愉快な物を見せて」と小さく答えた。


別に不愉快じゃないんだけど、どうしよう困った。


「別に不愉快じゃないけど、女の子なんだから気を付けないとね」


寧ろ、良い目の保養なんだけど言えないなこれ。


女の子は目を細めたかと思うと


「ブサイクな私の汚い物を見せてごめんなさい」


凄く悲しそうな顔で答えた。


何で、ブサイクなんていうのさ、、君は究極美少女じゃないか?


どちらかと言うと僕の方がブサイクになるよ。


「いや、何でそういうこと言うのかな? 凄く可愛いと思うし、その眼の毒だから注意しただけなのに」


「本当にごめんなさい...もうしません...あれっ可愛い?」


「そうだよ、可愛い女の子がパンツ丸見えでお弁当食べていたからさ、注意しただけだよ?」


「そ、そう...」


最初不思議そうな顔をしていたけど、彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまう。


暫くすると彼女は急に何かを決意した様に


「ごめんなさい、お詫びにソーセージをあげるから許して、、はいあーん」


と言った。


良かった嫌われてないようだ...しかもこれって間接キスじゃん。


「えっくれるの? 有難う」


僕はソーセージを美味しそうに食べた。


何か返してあげたかったけど、食欲が無かったからパンと牛乳しかない。


仕方ないからこれを勧めた。


こんな物なのに彼女は嬉しそうに食べてくれた。


そしてお弁当まで半分わけてくれた。


凄く優しい女の子だった。


僕があーんと彼女に食べさせるとおずおずと彼女は食べてくれた。


凄く、嬉しい。


しかも、僕にも彼女があーんと食べさせてくれる。


嬉しさが止まらない。


泣きたくなるのをグッと堪えた。


僕は君に会えなければ自殺や目を潰す事を考えたかも知れない。


だって、僕の周りには化け物しか居ないのだからね...


たった一人の女の子。


それが白百合さん、君なのだから。

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