第三話
メッセージ
ぴろん、メールの着信音が聞こえた。これは五度寝くらいだけど、まだ起き上がれるほど元気じゃない。寝すぎて逆に疲れちゃったんだろうか。寝過ぎて夜なんて無かったみたいだったのに。
バイザーを覗き込んでなんとなく確認したところでは、なにかの通知のようだった。返信が今すぐ必要ってわけじゃない。
私はバイザーを放り出して、夜墨を撫で撫で目を閉じる。撫でさせてくれて添い寝してくれるなんてやっちゃんはなんて優しい猫だろう。
ブブブ、今度はバイザーが震えた。着信に思えたけど、出られなかったんだから無視だ。起きてから折り返せばいい。起きてから起きてから。
ぽぽん。テレビの通知音だった。薄目で見ると、メールの件名が見えた。重要そうじゃない。
ぶーっ、壁のなにかコンソールが鳴る。インターホンでないことだけは覚えているから、無視。
なんでこんなに一気に機械が呼ぶんだろう。平日の昼間は部屋にいないから知らないだけで、いつもこうなのだろうか。
そうかもしれない。だって夜墨がこんなにすやすや眠っている。いつものことで慣れているからに違いない。
「やっちゃんはあったかいねえ」
通知音が聞こえないように頭まで掛け布団をかぶって、猫を抱く。あたたかさと視界のくろさに、するするとまた寝入ってしまった。
腰が痛くなって起き出したのは夕方過ぎで、例の通知音を追いかけて確認した。
「ありがとう?」
送信元はめちゃくちゃで、バラバラだ。でも全部同じ内容だった。
ありがとう。一言だけ。
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