無面(ノン・フェイス) ~復讐のヒーロー~

檻墓戊辰

プロローグ:名もなき男の話

第1話:無面(ノン・フェイス)

 もしも、もしもだ。

 この世界に仮面(マスク)を付けたヒーローたちがいなかったら?

 仮面のヒーロー達が世界の秩序を守るため、悪と戦っていなかったら?


 どんな世界なのだろう?


 ヒーローたちに怯え、ヒーローたちに反発し、悪事を働く連中も存在しなくなるだろうか?

『ヒーローがいるから悪党(ヴィラン)がいる』。

 そう宣う輩がいる。

 バカバカしい理屈だ。

 どんな世界でもクズは所詮クズなのだ。

 叩きのめさなければいけない。

 ただ、ヒーローの光が強ければ、悪の闇も深くなるのも事実。

 悪とは正義の対になっている。

 正義を振りかざすヒーロー達が現れたら、悪はさらなる力を持つだろう。

 悪は昨日より今日。今日より明日の方が深く暗く冷たく大きくなっていく。

 悪とは進化していく。圧力が強ければ強いほどに。

 人々は問う。


 ヒーローは必要か? そしてヒーローとは一体何であるのか?


 俺は答えよう。いや俺が答えよう。

 ヒーローは必要であると。ヒーローとは象徴であると。


 彼らがいるから多くの人は闇夜に震えなくて済む。

 彼らがいるから日常を謳歌できる。

 彼らがいるから、人は笑っていられるのだ……。


 だが、どれだけヒーローが頑張ろうと、クズはたくさんいる。

 それも狡猾で、彼らでは手が出せない奴らが大勢いる。

 そんな連中を深く深く闇の中に潜り、世の中を汚す。

 誰がそいつらを掃除する?


 俺だよ。


 ヒーローは多くのものに縛られるが、俺は違う。

 奴らを叩きのめすのに、躊躇いも後悔もない。

 俺を縛るルールは3つ。


1、 悪党に情けはかけない

2、 俺を狙う奴らに容赦はしない

3、 1日に10人以上は殺さない


 それだけ。

 そして俺は、狙った獲物は必ず追い詰める。


 悪党どもは、俺の影に怯えて眠ればいい。

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