しかばねたちのらくえん

@elelel

アヴァロン編

第1話 「骸」

「…なあ…これ…」


「酷いな…」


--------------------


「調査報告

583年 13/16、病院や児童保護施設を巻き込む爆発事故発生。原因は未だ不明。死者23名、重軽傷者38名。

3名の孤児を保護したが、栄養失調が見られた。児童保護施設についての調査(建物が焼失していたため、主に孤児3名への聞き取り調査)によると、孤児の数名は地下に隔離されていたという。さらなる情報が求められたが、孤児3名に記憶障害が見られ…」


「んー、長いっ」


長髪の男性が伸びをする。彼のデスクには「公安部対怪異課長官」と書かれている。彼が煙草を咥えると、扉をノックする音がした。


「失礼します、天野長官。」


その台詞と共に入ってきたのはオールバックに眼鏡にスーツと風貌は「仕上がっている」ものの、顔にまだ幼さを残した男であった。


「律クン、お疲れ様。」


タバコをふかし、天野と呼ばれた男は労いの言葉を口にする。


「いえ、自分はこれからまだ仕事があるので。それより、以前からウチで話題のヤツが、《骸》が市内で発見され、拘束を試みた2名の局員が負傷しました。」


「《骸》…か。君の、否。君たちの出番というわけだね?」


目を合わせることもなくそう天野は問う。


「ええ。《骸》は我々、肆班が仕留めます。では、私はこれにて失礼します。」


報告を終えた男は、部屋から出て行く。


「飼い犬となった律クンと、野良犬となった少年…果たしてどちらが幸福なのだろうね。」


そう言って天野は目を落とす。その先のスクラップ帳には、こう書かれていた。


--------------------


奇跡の生還 3人の孤児


谷川 律

山那 蓮太郎

諏訪 三月


--------------------


《骸》…B級憑依体

    原体…山那 蓮太郎

    

《戰慄》…A級憑依体

     原体…谷川 律







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る