最盛を誇る科学の力はひっそりと行使されるらしい。その研究所もまた街のはずれにあった。

 科学者の研究室より幾分大きく、建物の周囲の雑草は手入れが行き届いていて、こぎれいだった。誰もそこでダンスパーティが開かれないことはわかっていた。工房の敷地は街の中心の教会の広場の二倍はあり、様々な管が建屋から伸び、それらはまた別の建屋に続いていた。

 アダンたちは入り口らしきドアを見つけ、そっとそれを開け中の様子を覗いた。白い石で直線的に作られた内装は無機質で、冷たい空気が溜まっているようだった。あまり長くはない通路の向こうに大掛かりな扉が見え、それはアダンたちの知っている意匠ではなかった。

 エルフと科学者に目配せをして、彼らはその扉のほうに、あまり大きな音を立てないようにして近づいた。エルフは扉手を当て、何かを感じ取ろうとした。

「ああ、なにかすごく嫌な予感がする。ここには精霊がいない。もう少しいうと、精霊はいたのだけれど、何かによって消滅させられてしまったみたい。こんな感じ、初めて」

「なるほど、どうやら何かあるのは間違いないようだな」

 アダンは迷いを振り切る勢いでその扉を開けた。

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