六
アダンは組んでいた腕を戻すと片方の腕にもう片方の肘を置き、手を頬にあててしばらく黙った後、やや落ち着いた声で話し出した。
「とりあえず、状況を整理させてくれ。俺は宮廷の出した胡散臭い指令によってほうぼうはい回って、ようやくそれらしい情報にあたることができた。予言が的中するかもしれない情報に。それでもどういうことが起こって予言が現実になるのかはまだ誰もつかんでいない。そういうことだな」
「残念だが、その通りだ」
「ちょっと、突然やってきて、言いたい放題言って、あなたは何も情報をくれないの?私たちはこんなに頑張っているのに、あなたにそこまで言われる筋合いはないのではないの?」
アナスイアは少しの怒気を含めてアダンの方を見やった。アダンはアナスイアを一瞥して小さく首を振った。
「気持ちに折り合いがつかなくてね。すまない、今後は気にすることにするよ。こっちの話で、少々苛立っていたんだ」
アダンはしかめっ面を少し矯正して、わずかな謝罪の表情を浮かべて言った。
「それで、あなたには何かこちらに有益な情報はあるの?」
「いや、ない。ただ、腕のいい密偵が二人ほどいる。彼らに手がかりをつかませてここまで来たんだ」
「あら、そう。それはご苦労様なこと。それじゃ、私たちは引き続き調査するから、何かわかったらまた来てね」
「おいおい、そりゃないぜ。さっきも言ったがあんたたちがようやく見つけた手掛かりなんだ。協力してほしいんだ」
エルフはため息交じりにすとんと肩を落とした。
「あなたねぇ」
エルフが口を開くとほぼ同時に、研究室のドアが素早く開いた。少し息を切らした抜け目のない密偵がそこに立っていた。
「なにか、わかったのか?」
アダンは密偵を不思議そうな目で見ながら尋ねた。
「はい、例の青い光の目撃情報です」
密偵の話はこうだった。十数年前、この国の西のはずれで、青い光を目撃したものがいた。そしてそれを目にした数週間後に原因不明の病でこの世を去っているものが何人もいると。そしてその光が目撃された場所の近くに不審な研究所のような建物がある、というものだった。
アダンを含む三人はそれぞれの聞きやすい体勢で椅子に座っていたが、科学者はそれを聞いてがたんと立ち上がり、不安の表情を浮かべていた。
「どうしたんだ、いったい」
「博士、なにか心当たりがあるの?」
「ああ、これは本当に国を滅ぼしかねない」
そういって科学者は急いで研究室から出て行った。取り残された二人はキョトンとした目でお互いを見合った。密偵はもうそこにはいなかった。
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