二十八話:第一回【暁の月】温泉会議

 尻派か胸派か。




 それは不毛な争いだ。


両方素晴らしいに決まっているのだから。




「聞いてる? ムッツリ君!」




「聞いてます!!」




 温泉の岩場に腰を掛け、おみ足を組むアルマ。


見える。 組んだ足から覗く三角地帯に俺は釘付けだ。




「……まったくもう」




 そう言って額に指を付け溜息吐く。


いやいや。 俺も悪いがアルマのエロ装備も悪いと思うよ!




 ミニチャイナにビキニって。


しかも黒だよ? 目がいくに決まってるではないですか……。






 豚スタンプをごしごしと落とし、湯船でリラックスタイム。


妖精バージョンのレフィーさんはシトリをビート板代わりに泳いでる。 シトリが楽しそうだからいいけど。


 


 アルマと信さんたちも合流し今後の作戦をアルマが語っていた。


第一回【暁の月】温泉会議である。 うん、適当だけど。




「へへへ。 ゲームならいくらでも飲めるなぁ〜〜」




「飲みすぎちゃダメですよ? 信くん」




 相変わらず仲の良い、信さんとハピさん。


 落ち武者リーマンは昼間から温泉で酒飲みですか。


 しかし、ハピさんもなかなかの魅惑のボディだ。


大人の女性特有のむっちり感がたまらない!




「おい、ノリオぉおお! ハピをエロい目でみてんじゃねぇぞおおおおおーー!!」




 酔っ払いウザい。




「はいはい。 じゃ今日の地下迷宮は宝箱狙いと、ファラオ狙いで行くよ〜〜」




「宝箱はいいが、ファラオは難しくないか?」




「そう?」




「DOTがキツイ。 回避できないし、ノリオの装備じゃすぐ死ぬぞ?」




「シトリも……危ない……」




 俺の装備もそうだけど、シトリもいい加減ステ振らないとマズいな。


レベルも百になったし進化もさせたい。




「シトリの進化はどうすれば?」




「ダメ……反対……」




 シトリを抱えるレフィーさんから反対の声が。


そのレフィーさんに抗議するように震えるシトリ。


レフィーさんのたわわな双丘がブルンブルンと弾む。




「おお!」




 シトリ――グッジョブ!




「……大きくなっちゃうよ?」




 俺も大きくなりそうです!




 鼻の下を伸ばした信さんの脇腹を、ハピさんの抓り攻撃が炸裂する。




「イデデデデ!?」




「ダメよぉ〜〜、信くん?」




 手元から落ちた熱燗は温泉に落ちてシュンと消えて行った。




「うーん。 進化させると【ふるふる】は無くなっちゃうかもね」




「え? そうなんですか??」




「決まったわけじゃないけど。 姿が大きく変わると、変化するスキルもあるよ? シトリちゃんの場合、タマゴで動けない代わりのエクストラスキルみたいな感じもあるしね」




 エクストラスキル。


特定条件下での隠しスキルみたいなもの。 固有スキルを含める場合もある。




「でも……」




「もちろん。 シトリちゃんはノリオ君のコルルなんだから、ノリオ君が決めていいんだよ? ねっ、レフィー?」




 レフィーさんは手に持っていたシトリを俺に渡してきた。


その手は名残惜しそうで、青い瞳はいつまでもシトリを見つめている。




「……うん」




 ごめんね。 と呟いたレフィーさんは鉄仮面を被った。




 今日はピンク色の可愛らしいフリルの水着なのだけど、やっぱり鉄仮面とは壊滅的に似合っていない。




「よーし! じゃあまずはシトリちゃんの進化からしよっか〜〜♪」




 アルマはアイテムボックスから、木の実を取り出した。




「じゃーん、進化の実だよ〜〜」




「おお〜〜?」




 ココナッツのような大きな木の実だ。


茶色の木の実の周りは仄かに光っている。




「シトリちゃんにあげてみて!」




「これを?」




 結構大きいけど大丈夫か?




 そんな俺の心配をよそに、シトリへと近づけた進化の実は光の粒子になりシトリへと吸い込まれていく。 昇魂をあげた時と同じ感じだ。




 シトリは眩い光に包まれる。


てか、ま、眩し過ぎる! フラッシュをたいたような閃光がシトリから迸る。




「目っ、目があああ!?」




「あ、言い忘れたけど。 眩しいから離れてね?」




 遅いよ!


ぐっ。 だからレフィーさんは鉄仮面を被ったのか!?




 アルマは離れ、信さんとハピさんはサングラスを着けている。




「くっ……、シトリ、大丈夫か?」




「うん。 大丈夫」




「喋った!?」




 シトリが喋った!?


まさかの進化に俺は驚きの声を上げた。


 


 視界が回復してくる。


瞳に移るのはスレンダーボディに豊満な胸のタマゴ。 ピンク色の可愛らしいフリル付きの水着を着ている。




「……何しているんですかレフィーさん」




「シトリ……可愛いまま」




 シトリを持ち上げて全体を見渡していたレフィーさん。


進化したはずのシトリは、まったく見た目が変化していない。




「な、なんでぇ?」




「ありゃ? シトリちゃんは進化も新しいね〜〜!」




 そんな馬鹿な。


ほんとにどこも変わっていないのか!?




「シトリ・ステータス」




―――――――――――――――


名前:シトリ


種族:守護獣 卵型 


レベル:1(★) 




HP:10


MP:10




力:1


体力:1


敏捷:1


器用:1


知力:1


精神:1


SP:500→600




スキル:【幸運Lv.20】【鼓舞Lv.20】【ふるふるLv.20】【マイレージLv.1】


スキルポイント:43→143




物理攻撃力:1


魔法攻撃力:1


クリティカル:2倍


攻撃速度:1




物理防御:10%


対火炎属性:10%


対風雷属性:10%


対水氷属性:10%


対土岩属性:10%


ダメージ軽減:10%




―――――――――――――――






「マイレージ?」




 ポイントでも貯まるんかいな??


 また訳の分からないスキルが増えた。




――――――――――――――――――――


【マイレージ.Lv1】


コルルと契約者のあらゆる行動でポイントが貯まる。


貯まったポイントでコルルが契約者にプレゼントをくれるぞ!


親密度を上げておかないと悲惨な(呪われた)プレゼントが!?




――――――――――――――――――――




 運営の悪ふざけか……?




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