第10話、巨大な化け蜘蛛が糸を吐く
魔力光に照らし出された
「うわぁもう
「どうやら、やべーもん復活させちまったみてぇだな」
さすがの俺もちょっと声がかすれる。「伝説級の魔物じゃねえか」
「『人類と魔物Ⅰ』でこの土地に伝わる魔獣として習ったけど、歴史っていうより伝説みたいな認識だったわ」
そんな授業あったっけ。さすが
そのとき――
「ぐぉおおぉぉ――」
地下空間に怪物のくぐもった
いや、俺の横をすり抜けて
「危ないっ」
扇状に広がって降りそそぐ寸前、俺は右手に
蜘蛛糸はたった今まで彼女の立っていた土の上に、へなっと落ちた。
「あれに
「知る必要なんざねぇよ」
俺は手身近に答えて、左手を怪物に向かって突き出した。体内の
次の攻撃がくるより早く――
「グギャアアァアァァ!」
目に見えぬ衝撃波に襲われた土蜘蛛から、身も凍るような絶叫が聞こえた。
「すごい……。呪文も唱えず魔力をそのまま打ち込んでるの!?」
土蜘蛛の頭から体にかけて縦に大きな亀裂が走り、左右に分断されているのが見える。
「やったか?」
俺は誰にともなく問う。
当然ながら土蜘蛛に動く気配はない。
「伝説の土蜘蛛も
「何百年も封印されてるあいだに力が弱まったんじゃねえか?」
あまりのあっけなさに肩透かしを食らって、俺たちは一階へ戻ろうとする。石段に足をかけたとき、振り返った
「傷が―― ふさがっていく」
「
土蜘蛛は封印から
「
再び襲い来る糸の
「炎を食べてる!?」
あろうことか赤い火の玉が次々と、土蜘蛛の口内へ吸い込まれてゆく。
「傷が治るってんなら、死骸も残らねえほどのケシズミにしてやらあ!」
俺は一歩前に出て印を結んだ。
「
「ちょっと待ったぁぁぁっ!」
そーでした。
「というかここ地下だから、あたしの術でも上の建物がくずれたら二人とも生き埋めだけどね」
嫌なことを言いやがる。だが
「
炎は食いやがるし致命傷もふさがるし、攻撃しても意味なくね? と思っていると――
「我が前なる大地、奈落へと
ごがぁっ
派手な音を立てて、土蜘蛛の下の土が掘り下がる。ここは地下、上に場所がないなら、さらに下へ落としてしまう作戦か!
「ただの時間稼ぎよ」
「俺は派手な攻撃魔術専門だ」
「なにか案は――」
「ねーよ。考えるのは
間髪入れずに答えると、ちょっとあきれた顔で俺の頭に手を伸ばしてきた。
「もう!
そっと俺の髪にふれる。そのやさしい感触に、
「俺の役目は、そんなあんたを守ることだよ」
と笑いながら答えたとき、穴から土蜘蛛の一部がのぞいた。
俺は無言で結界を展開した。
「さすが
「なんかあいつ、
三回とも明らかに彼女をねらっていたと思うのだが。
「エサ認定されてるのかも」
「どーゆーこった?」
「八百五十年前には都の半数以上の人間を食らったと言われるのよ!」
「そいつぁ穏やかじゃねえな。俺に糸を仕掛けないのは、うろこの生えた生き物は口に合わねえってわけかい」
俺は唇の端を笑みの形につり上げた。「好き嫌いはよくねえな、土蜘蛛さんよ」
ついに前足を穴から出した土蜘蛛が、俺たちに向かって火を吐いた。
結界はすでに展開している――と思いきや、
「熱い!」
叫んだ
「我が力よ!」
俺の声に応じて、周囲に大量の水が出現し一瞬で消化した。
「くそっ、結界ごと蒸し焼きになるとこだったぜ」
「手加減できる相手じゃないみたいね」
俺の腕の中で
「あたしがこの空間全体に風の結界を張って被害を食い止めるから、
「いいのか? 結界とか防御系はあまり得意じゃないって――」
「迷ってる暇はないわ。風属性は得意だから」
「分かった。あんたがそう言うなら」
俺はうなずいた。
彼女の詠唱に、俺の声が重なる。「
土蜘蛛は俺たちに向かって前足を振り上げたまま静止している。魔術構築中の俺を中心に渦巻く強烈な「気」に、動けずにいるのだ。
「願わくは、
俺の術が完成した!
「我を包みし
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