第08話、季節はずれの肝試し
新校舎から道を一本はさんだ旧校舎へと、俺と
「
物置と化した旧校舎なんて、普通用はないはずだ。
「生徒会の用事でね。学園祭で使う天幕を取りに行ったの。そしたら布で隠してある扉をみつけちゃってね。もしや七不思議の
旧校舎敷地へ足を踏み入れると庭の草木は伸び放題。古びた木造建築を覆い隠さんばかりにススキが生い茂っている。
「
「旧校舎の
「ねーな」
そーゆー話題って友達いねぇと無縁なんだよなあ。
「男子って七不思議とか
おお
俺は壁のすすけた平屋建てを見上げる。
「そもそもこの建物に地下なんてあるのか?」
建物の下から見慣れぬつる草が地上へ
両はしに砂の積もった廊下をミシミシ踏みながら進むと、突き当たりに
「あのうしろに扉があるってんだな」
天井から吊るされた布はところどころ破れ、そのうしろからのぞくのは金属だろうか? 周囲の板張りの壁と異なることは明らかだ。
「ねっ、怪しいでしょ! こんなのめくらずにいられないじゃない」
「
「木造の古い校舎にこんないかめしい扉、
扉には
「開けるぜ」
「えっ?」
「鍵を開けたの!? すごいっ、一体どういう術?」
「ん? 鍵開けの術」
「……それは見りゃ分かるわよっ」
鍵を開けようという意図を持つとひらくのだ。魔術理論に詳しい創作魔術専攻の
冷たい扉に体重をかけると、それはゆっくりとひらいた。湿ったかび臭い空気が俺たちを抱きすくめる。
「階段……」
「ほんとにあったのか、地下室」
古い石段が薄闇に吸い込まれてゆく。俺は青白い手のひらを暗い天井に向けると、光を
「呪文も唱えずに魔術が使えるって便利よね」
確かに
「足もと気を付けてな」
一段降りて振り返ると、
一足ごとに石段の先がくずれ、パラパラとかけらの落ちる音がする。俺は慎重に歩を進めた。
ガタン!
うしろからひときわ大きな音と、
「きゃぁ!!」
振り返った俺の目の前に
「うわあぁっ!!」
重心がうしろに倒れる。かかとが石段を離れ、身体が宙に浮く。
心臓がはねあがった瞬間、魔力光が消えた。
「いやぁああぁぁぁっ」
叫ぶ
――
俺の意志に答えるように二人の身体が空中で制止する。
重力が消えた暗闇の中ゆっくりと、俺は
「無事か?」
闇の中で声をかける。
「ごめん
泣き出しそうな
気をゆるめると空間の重力が平常に戻る。途端に
「俺はなんともねえよ。
そっと彼女の背中をなでる。一寸先も見えぬ闇の中、手のひらに曲線美を感じる。
「あ、あたしは平気っ」
落ち着いたのでもう一度、魔力光を出現させると
とまた謝って身体を起こした。彼女の
俺も思わず、いや
ここは密着しちまったことなど気付かねぇふりしたほうが、
「まったく歩くだけで崩れてくるってなぁ危ねえ階段だな」
俺は立ち上がって話を変える。
「そうとう長い間、誰も使ってなかったのね」
「だろうな。そしてまた怪しい扉のお出ましだぜ」
階段の下には何重にも板を打ち付けた古い木戸がたたずんでいた。
「
戸に貼られた黄ばんだ紙に魔力光を近づけ、俺は書かれた言葉を読み上げる。
「今度はあたしにまかせてっ」
まだちょっと頬を赤らめている
「
ばしゅぅぅぅううっ
風の刃が鋭い音を立てて、表面に打ち付けられた板ごと木の扉を寸断した。その奥にあらわれたのは、がらんと広い土間のような空間。積みあがった木材をまたいで足を踏み入れると、ひんやりとした空気が腕を
「なんだ、あの大きな岩は」
「何か封印されてるの……?」
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