第07話、無尽蔵の魔力
「師匠が相手すればいいじゃない」
「えええええっ!?」
俺より先に思いっきりのけぞったのは師匠のほう。「嫌ですよぉ。私は汗かくの嫌いなんですから」
おお。このおっさん気が合いそうだ。
「あー俺も
「ちょっと
「瀬良師匠ってちっとも強そうに見えないけど、若くして
本人は小声で話しているつもりなんだろうが、
「れ、
案の
「ねっ、本当に若い人は絶対あんなこと言わないでしょ!」
自信満々である。師匠は大きなため気をついて、
「では
師匠は自分の魔術剣へ静かに語りかける。「我が声を聞きたまえ、
魔術剣の刀身が輝きだした。
俺もまねしてつるぎを手に、
「
魔術剣の
「
とささやいた。
「
「良いじゃないですか。斜め上を行く感性で素晴らしいです」
にこやかにほめたたえる師匠。いや、ほめてるのか?
しかしちっとも反応しない俺のつるぎを見下ろし、まじめな顔になって、
「雑念が入るようでしたら言葉を口に出す必要はありません。心で語りかけてください」
と助言した。
俺は目を閉じ、つかを握る両手に意識を集中する。体内にうずまく
俺のまわりに風が起こる。魔術剣を中心にうずをまき
みんなが
パリンッ
秋の庭にかたい音が響き渡った。
「つるぎが―― 割れた!?」
学生のひとりが、おどろきの声をあげた。
恐る恐る目をあけると、
「俺の
自分でもなにが起こったのかよく分からない。
「――なんと」
前に立つ師匠が目を見開いている。「想像を絶する魔力量なのでしょう……」
「
「だって龍神さまですもの!」
師匠は魔術剣を鞘におさめると解説しはじめた。
「魔道医学の
俺は納得した。「人間の身体だったころとは魔力の扱い方が違うのか」
今後はうっかり山を爆発させないように気をつけよう。
師匠の説明に
後半はあってるんだけど、前半! 龍神さまじゃないって今の話から明らかだよな!?
俺はちょっと頭をかかえる。
「
「ひえ~、めんどくせぇ」
思わず本音をもらす俺。「ならいいや。魔術剣なんか使わなくて」
武器などなくても、いまの俺はじゅうぶんすぎるほど強い。
「でも
うれしそうに言うと、パチパチと手をたたきだす。
「そうね! 天気まで操ってあたしたちみんなを救ってくれたし、ほんとにありがとう!」
かつて落ちこぼれ扱いだった俺は授業で注目をあびるなんて慣れていない。胃のあたりがソワソワしだした。
「よっ、色男!」
などとからかいやがった。俺は耳まで熱くなるのを感じて、
「やめてくれよ」
と小声でささやくと
「どうしたのよ、みんな喜んでるのに」
目を輝かせる様子を見て、俺はふっと笑った。
「
俺はなんだか疲れちまっていけねえ。
「そうかな? でも
そんなに身長差はないけれど、つま先立ちする
「ありがとな」
素直に礼を言うと、
秋風がイチョウの枝をゆらし、
「そうだ、
「あるよ。なんで?」
「ついてきてほしいところがあるんだけど」
うしろ手を組んで、
「構わねえよ。どこに行くんだ?」
「いまは使われてない旧校舎なんだけど、きのう変な隠し扉をみつけたのよ――」
彼女には似合わぬ真剣な表情だ。
「へえ、おもしろそうじゃん」
俺はワクワクして身を乗り出した。
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