Root 19 まるで回転木馬。


 ――回り回り続ける脳の中。僕は起き上がる。時として窓から見える夕闇の空模様。



 カタカタ……と音を立てつつ、奏でるキーボード。


 この夏、これまでを振り返る記録。それは画面上で踊る文章。芸術棟で体感した不思議な出来事。インプットされた記憶を今ここに、物語という名のもとにアウトプットする。


 思ったよりも疲労感?

 まだ倦怠感は残るけど、脳内を整理するの。これまでの芸術棟で起きた謎……


 事の始まりは『開かずの扉』


 その鍵は、結局は令子れいこ先生が握っていたことになる。僕は彼女と知り合って、その開かずの扉の奥へ、つまりはアトリエへ身を置くことができた。そして誕生したの。新たなる美術部。十五年もの時を経て、彼女の跡を継ぐ僕らの美術部が起動したのだ……


 第二は『壁の向こうにある調べ』


 三階の大広間の壁の向こうから聞こえる調べ。これもまたアトリエから繋がっていた。


 美術部以外……リュウ明峰メイホウさんとの出会いだった。壁の向こうは彼女の練習場所となり、正式に許可も頂いた。彼女も今日からは僕らの仲間で、美術部の音楽部門に籍を置いた。


 第三は『十三階段』


 あるはずのない三階よりも上……


 未完成で記憶の向こうに封印された場所。アトリエから三階、そこから更に階段を上ると存在している。令子先生の幼少期の記憶が眠っていた場所だ。そして彼女の実のママとお兄さんの思いと向き合えた場所。彼女の過去が漸く未来に繋がった場所で……


 じゃあ何故、封印したはずの場所を今になって、彼女は僕に教えたの? 

それに怜央れお君も、何故その場所を知っていたの? ……まだ謎は残されていることに気付いた。


 そして第四は『中村なかむら美路みち』という人物。


 緑の帽子を深く被り……まるで素顔を隠すように。自信がないのかな? 僕には美人に見える顔だけど。それから迷彩のツナギは、その素肌をも隠している象徴なのかな?



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