Root 11 ホワイトな歴史。
――きっと、黒の要素が見られない、純真無垢な歴史だったことを物語っている。
今いるこの場所にも相応しく、抽象的な白……
喩えコミュニケーションが希薄だったとしても、今も眠っているその絵が、見事なまでに表現している。そこに残されている面影は、誰のものかを僕に囁いてくれた。
それは、あなたの面影……
海に戯れる二人の少女……その中の一人が紛れもなくあなた。幾度かは見たけれど、いつ見ても、この上ない僕の絵の見本。それもそのはずで、師匠の先生が描いたもの。
芸術棟の歴史は、ここから始まったと言っても過言ではなく、
芸術棟の主が自らの意思で、初めて親しき友を招いた。それが、学園始まって以来の合宿。部員が二名の美術部の合宿……ここが原点。芸術棟の始まりだった。自分の存在、ありのままの自分が人の中へ。自分だけの世界だったこの建物を、学園の皆に分け与えた大いなる前進。今となっては生死を問わず、この人の願いは……僕が受け継いでいる。
この人の心臓は、一度は死んだ……
でも蘇った。
最先端技術によって奇跡は起きたの。
そして今、ぼやける白いシルエットから徐々に、一眼レフのカメラのようにピントを合わせもって、その名が明かされる時来たるだから、同時にその身も明かされる……
――
というのが、この人の名。見た目は僕らと溶け込みそうな幼い容姿だけれど、一児のママ。列記とした三十代女性。そして何よりも……僕の師匠。人生でも学園でも……
そして、この芸術棟の持ち主。やはり七不思議の根源は、この人にあるのだ。今は美術部顧問として管理的な役割を担っている。……
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