Root 05 弦楽器を調べる。
――同じ字を書くの、調べ。まだ続くバイオリンの、情熱ともいえる調べ。
僕は服を着て仕切り直し。……でも誤解しないで。さっきは
「ホントかな?
「そんなことない! とっても恥ずかしかったんだから。……意地悪。僕が見られてもいいと思てるのは怜央君だけだよ。怜央君だから一緒に、一緒に絵を描いてるのに」
きっと思い切りふくれ面。
そして怜央君は僕を宥めつつ、歩みを進める。三階の広い方のお部屋へ。三階の踊り場には二つのドア。前か右か。前は小部屋……とはいっても、それなりには広いの。教室と比較するならその半分。なら、広い方はというと、もろ教室並なの。その広さを拝見したということは見たということ。……誰も、いなかったということだ。
でも聞こえるバイオリンの音色。急にアマリリスに演奏が変わった。「ヒッ」という短い悲鳴。怜央君の悲鳴、予想と違うことが起きたから。僕は音色を辿り三階の……広い方のお部屋を捜す。間違いなくここから聞こえてくるのだけど、見渡せど白い壁、窓しかなく……広い中に黒いピアノがポツンと一台あるだけ。もちろん誰もいない。僕と怜央君以外は誰もいない。でも聞こえるバイオリンの音色……確かに近いの、ここから。
強いて言うなら、この白い壁の向こう? 有り得ないけど、まさかの白い壁の中からという表現の方が近いかも? 耳を澄ませる、怜央君とともに。
ミシミシ……と、足音も聞こえる。
本当にそうなの、この三階の大広間。白い壁から聞こえている。思想がそこへ辿り着いた時、僕は思わず壁を叩いた。トントン……とノックと同じ要領で。――するとするとするとだよ、叩き返してきたの。トントン……と、有り得ないけれど、現実に起こったと認めざるを得ない光景。サーッと血の気が引いて、ナチュラルクーラーまで発動? 僕と怜央君はヒシッと抱き合っていた。お互いの震えを感じ合っていた。
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