イルカのオッズ

公募用の小説書いてたりFEエンゲージを遊んでいたりしてたらすっかり更新が空いてしまった。


さて先日、神奈川県にある八景島シーパラダイスへ行った。

関東近郊において非常に有名で巨大な水族館である。

人工島の上にあり、その関連施設だけで島面積のほとんどを占める規格外な水族館だ。


ブラッティシェイカー、略してブラシェが「水族館に行きたい」と言ったため皆の休みを合わせた次第だ。


ルームシェアメンバーである「私」「姫」「川上」「ブラッティシェイカー」の四人と、よく我が家に出入りする「ニラパセリ」の計五人である。

ニラパセリに関してはドーナッツ作りすぎ事件「ドーナッツは生地の三倍の量は出来る。」編で登場するのでそちらも参照願いたい。


五人での移動となると車の方が楽であるので車を用意した。

私は自家用車を所有していないが、東京都内に住んでいるためカーシェアを利用することが容易だ。

前日までに近所の車を予約し出発の日の朝を迎えた。


だが。

……起きない。姫が。

姫は生活リズムが終わりすぎで起床時間がバグりまくっているので、徹夜したり朝から夜まで寝ていたり夕方早々に就寝したりとやりたい放題である。

当然のごとく、出発時間を過ぎても起きる気配はなく、皆で起床を見守ることとなった。

9時出発としていたが、結局我々が出発できたのは10時半であった。

私はこの事態を予見していたので車の予約を10時半からにしておいた。

自画自賛ではあるが流石である。


八景島シーパラダイスは都内からだと高速利用で所要時間60分前後。

昼頃に到着した。

お昼を食べてまずはイルカショーを見ることにする。



八景島は海に面した、というか海の上の人工島なのでめちゃめちゃ風が強い。

その日は大変天気が良く暑いくらいだったのだが、風が強すぎて肌寒くなる。

上着を持ってこなかった姫が辛そうにしていたので私のジップアップパーカーを貸したのだが、パーカーを脱ぐ前提ではなかったので中に着ていたクソダサTシャツが露わになったのは辛かった。

イルカ可愛いですね。

流線形のフォルムから垣間見えるエゲつない筋肉にうっとりしてしまいました。


私達は館内を巡った後、外で売っていたクレープを食べることにした。

ブラシェ君がいそいそとクレープを手に席に着く。

50円の追加料金でホイップクリームをトッピングできるらしい。

クレープの頭からは白いクリームが飛び出して、一回り背丈が大きくなっていた。

クリーム分大きくなったクレープ。

しかし。

それは吹き飛んだ。

クリームの部分だけが。

トンビだ。

海沿いの観光地でよく見られる光景であるが、猛禽類のトンビが観光客の手にしている食べ物を狙って奪うのだ。


ブラシェ君の持っていたクレープもトンビの餌食となった。

追加したホイップクリーム分が持っていかれた。

50円でトンビの餌を買った男の称号が手に入った。

ちなみに館内のカピバラの餌は100円でした。

お得だね。



最期に我々が辿り着いたのはお土産コーナーである。

そこにあったのは大量に積まれたイルカぬいぐるみ。

そして、透明な球体の中で吹雪のように舞い踊る紙の切れ端。

そう、くじ引きである。

エアー抽選機と呼べばいいのだろうか、巨大な筐体の中で風が吹いており、それによって紙のくじが舞う。

その一つを手で掴み、中の等級によって景品が貰えるものである。


景品はイルカのぬいぐるみであり、等級が上がるほど巨大な物になっていくという仕組みであった。

一等ともなると1メートルをゆうに越えている。


そこでニラパセリが目を輝かせた。


ぬいぐるみは確かに可愛い。

大きなぬいぐるみに惹かれる気持ちも分かる。

30歳の独り身男性がぬいぐるみを好きでも構わないと思う。

だが。

ニラパセリにぬいぐるみの趣味はない。

彼が惹かれたのは、そう。

ギャンブル要素である。


競馬に狂い、ガチャを引くためだけのスマホゲーを大量にインストールし、競馬に狂い、TCGのパックをレアを求めて買いまくる、競馬に狂い、彼は、ギャンブル要素でしか己の生を実感できないのだ。

景品はもはやどうでもいい。イルカのぬいぐるみが欲しいわけではない。

己の生を実感する為にくじ引きに挑むのである。

リストカット常習者みてーだな、紙吹雪が競馬場みてーだなと私は後ろから眺めていた。

結果五個のぬいぐるみが集まったが、今は姫の棚の上に並んでいる。

出走待ちのパドックみてーだなと思った。

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