血染めの御手

囲い(ファンの意、オタクインターネット文脈的には狂信的なファンコミュニティやそれに属する人間を指す)がいるような人が、Amazonの機能を介して色々なモノをインターネット越しに買ってもらったり、You Tubeを介してお金をもらったりする文化があるじゃないですか。


残念なことに私には、かようなファンコミュニティが存在しない。

のではあるが、狂信的なフォロワー? 友人? の一人から高額スパチャが届いた。住所を把握されているので勝手に送りつけられた。

金ではなく物で、だ。

エムケー精工のTEGARU=SEIRO, EM-215Kなる機種の電気せいろである。


端的に説明すれば、口が広くせいろを上に設置できる電気ケトル的なものであり、水を入れてタイマーをセットすれば時間通りに蒸してくれるという代物だ。

一万数千円ほどする。

それが突然新品で届いた。

わざわざ購入したもののようだ。


聞けば「ルームシェアにて役立てて下さい」ということである。

他人のルームシェアの充実の為に新品の家電を送ってくる狂信的行為に慄然としたものだが、さすがに何かしらの形で応えなければ不義理であろうと思った。故に蒸し料理を作る運びとなった。


というわけで、今回は手作り肉まんを作る話です。

基本的には強力粉と薄力粉を同量でまぜ、牛乳と砂糖で甘めの生地にし、イースト発酵させて蒸すだけである。


中身は何でもいい。

とりあえず、豚と牛の合い挽き肉と刻んだピーマンを混ぜた物、パスタソースにとろけるチーズを混ぜた物、パックのこしあんをごま油で練った物を用意して包んだ。


さて同居人を駆り立て肉まんを包ませる。

四人分を私一人で包むには孤独が過ぎるからだ。


同居人の一人である「姫」は20歳のうら若き乙女である。

怠惰と憤怒の罪を背負っており、基本的に家事や掃除の類を苦手としサボりもし指摘すると逆ギレをする。

多少のわがままは姫なので許されると思って生きている。

と少々残念な子である。

が、肉まんを包むことに関して無類の才を発揮した。


私の不器用な綿棒使い(家に綿棒がなかったので生地を伸ばすのにサーモスのマグカップで代用した)で出来上がる、どんな不均等なサイズの皮であっても上手く包む。


手先が器用な印象はなかったが、肉まんに対する慈しみの気持ちからか、存外マメな性格が故か私よりも上手い。

肉まんというのは包み上げる時のてっぺんのヒダが上手く作るのが難しく、そこが甘いと蒸したそばから割れてしまう。

しかし姫の作る肉まんは店売りと謙遜ない見た目である。


人間には得意不得意があり、適材適所という言葉を改めて大切にしていこうと思った次第である。


なお、もう一人の同居人である20歳男子の彼はピザまんを作るのに盛大に手こずり、両手をピザソースで真っ赤に染めた結果。

「血染めの御手‐ブラッティシェイカー‐」のあだ名を拝命した。


これは、「私」「川上」「姫」「ブラッティシェイカー」の四人が共同生活を送る話である。

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