吸血鬼ちゃんは血を吸わない〜転校生の銀髪美少女は、僕の血を飲んだ吸血鬼でした〜
蘭
プロローグ
僕の特別な血
もしもの話をしよう。
もしも、現実世界に吸血鬼なるものが存在していて、なおかつ僕たちのすぐ近くに生息しているとしたら、どうだろう?
嫌悪? 恐怖? それとも……絶望?
少なくとも僕は、そのことを知ってワクワクすると思う。
だっておとぎ話に出てくるあの吸血鬼だよ? ワクワクしないわけがない。
もちろん中には、吸血鬼の存在を知ってひどく怯える人もいるだろう。僕の考え方が楽観的だと言われればそうなのかもしれない。だけど、それならそれで結構。とにかく僕は、もしも吸血鬼が目の前に現れたとしても、喜んで歓迎するつもりさ。
これは途方もない妄想かもしれない。でも、誰だってふとした時に妄想くらいするだろう? 高校一年生で思春期真っ盛りの僕ともなれば、そんな妄想力も並みではない。だから許してほしい。
だけど妄想とは言え、さっきまでのことは決して嘘じゃない。僕は現実で吸血鬼が現れたら、本当に喜んで歓迎する。このことだけは間違いない。
——さて、ここらで現実の話をしよう。
実は僕、先天的な『多血症』を患っているんだ。
『多血症』っていうのは、血液中の赤血球やヘモグロビンの数が正常の数よりも多くなってしまう病気のこと。僕はこの病気に幼い頃から悩まされている。特段命に直結するわけではないけど、だからと言って放っておくこともできないから、定期的に病院へ通わなくちゃならない。割と厄介な病気なんだ。
——さて、もしもの話に戻ろう。
もしも、現実世界に吸血鬼なるものが存在していたとして、果たして吸血鬼は僕の血を好むだろうか?
馬鹿げた疑問であることは言うまでもない。……だけどこれはあくまでも、もしもの話。
『多血症』である僕の血を、吸血鬼が好むか否か……。
——僕はただ一つだけ、確信していることがある。
それは、吸血鬼にとって僕の血は特別なんだろうということ。
だから僕は妄想を膨らませてしまうのさ。
『多血症』の僕が、吸血鬼たちの標的にされるような妄想を……。
これはやはり途方もない、くだらない妄想なんだと思う。
でも僕が楽しければ、それでいいじゃないか。
だってこれはあくまでも、もしもの話なのだから——。
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