-3- 他者の子
第19話 キャンディー
ナミは
(ここが
単純にユイカを助けることができる方法を探しているのに、それが上手く行かない。ユイカの
「ナミさん……?」
ナミが怖い顔をして黙っているので、ユイカが
「あ……、ごめん」
ナミははっとして謝ると、大きく深呼吸をすると肩の力を抜き、笑顔を向ける。
「とりあえず、帰ろうか」
ララに帰れと言われたのだから、帰るしかない。それからどうするかは歩きながら考えようと思った。
ユイカはそんなナミを見て戸惑いながらもうなずく。
「……はい」
ナミがユイカを連れてバックヤードから出ると、そこにはララの姿はなかった。
「あの、ララさんは?」
ナミはレジに立っていたセツナに声を掛けると、彼は素っ気なく答えた。
「少し外に出てくるって」
「……そうですか」
そう呟くと、ナミははっとしてセツナに言った。
「あ、あの、今日はちょっと事情があってこのまま帰ります。ララさんは知ってます。突然でご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします」
するとセツナは、黒い前髪に隠れた緑色の瞳をナミに向けて小首を
「不調?」
体調のことを聞いているのだろう。ナミは軽く首を横に振った。
「いえ、そういうことではないのですが、ちょっと色々あって……」
ふと、顔を店の外に向ける。すると丁度そのとき、親子連れの姿が目に入った。父親と母親の間に一人の子ども。
子どもは父と母の手をそれぞれ握り、ジャンプをすると両親が腕を引っ張ってくれるので、さらに高く飛び
「……」
セツナは、親子連れに
「ほい」
ユイカは目をぱちくりと開いてセツナを見た。
「え?」
「キャンディー嫌い?」
戸惑いながらも彼は答えた。
「ううん」
「じゃあ、
ユイカはおずおずと、小さな右手をセツナに差し出す。彼はその手に、
「ありがとう」
「どういたしまして」
そのとき、外に気を取られていたナミが、二人の方に顔を戻すとはっとする。
「セツナさん、それ……!」
「ちゃんと買ったから大丈夫だよ」
「あ、いえ、でもそうではなくて……! 私が買えばよかったですよね、すみません」
「別に俺がしたくてしただけだから。それに子どもは大人からもらえる特権をもってるもんだよ」
セツナはにこりともせずに言う。彼はいつだって笑わないのだ。
「特権?」
「そう」
ナミは彼の
「理由は何でもいいけど、気を付けて帰りなね」
「理由?」
「不調じゃないんでしょ?」
「あ、えっと、はい。ありがとうございます」
ナミがセツナに頭を下げるのを見て、ユイカも「ありがとうございます」と真似して頭を下げる。
「うん」
店を出てからナミがユイカに「よかったね」と言うと、彼はにこっと笑ってうなずいた。キャンディーをもらったことが、余程嬉しかったようである。
(セツナさんって、子ども好きなのかな?)
ナミはそんなことを思いながら、ユイカと店を出るのだった。
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