第一回文房具選手権

丸子稔

第1話 二十二世紀の日本

 2022年〇月〇日、俺は自らが主として開発に携わったタイムマシン(神崎俊夫かんざきとしお号)に乗って、約七十九年後の我が国を覗きに来たが、そのあまりの変貌ぶりに愕然としていた。


 二十二世紀の我が国は、道路を走っている車は皆無に等しく、ほとんどの車は空中を縦横無尽に走っている。

 また、高齢化社会にも益々拍車がかかり、二人に一人は老人という有様だ。

 そのせいか巷にはロボットが溢れ、当たり前のように人間と共存していた。


──ある程度予想はしていたが、まさかこれ程とは……


 そんなことを思いながら街中を歩いていると、電器店の大型テレビに異様な光景が映っているのが目に入った。


──なんか公園みたいなところに文房具を集めてるけど、今から何をするつもりなんだ?


 俺は興味本位で電器店に入り、大型テレビに目を向けた。


「二十二世紀になって早数ヶ月、ただいまから人気投票によって選ばれた十六種類の文房具による、『第一回文房具選手権大会』を開催します。それに先立ちまして、まずはルール説明を行います。ここ、○○運動公園で行われるこの大会は、まず十六種類の文房具を二つのグループに分けて一周四百メートルのコースを競い、それぞれ上位四位に入った者が、その後に行われる決勝を戦うということになります。申し遅れましたが、私はこのレースを実況する佐々木です。そして隣にいるのが、文房具評論家でいらっしゃる解説の栗田さんです。栗田さん、よろしくお願いします」


「よろしくどうぞ」


「さて、二十二世紀を記念して、このような大会が開かれたわけですが、それについて栗田さんはどう思われますか?」


「そうですね。どちらかというと、今まで地味な存在だった文房具が、こうして日の目を見ることができて、私としては非常に感慨深いものがありますね」


「確かに、私も学生時代はよく使っていましたが、大人になってからはそのような機会がめっきり減りました。今は見ることさえなくなった文房具も参加しているので、それらがどのような走りを見せるかとても楽しみです」


──はあ? 文房具によるレースだと? お前ら、頭大丈夫か?


 俺は心の中で二人にツッコミを入れつつ、その後の展開を見守ることにした。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る