8月19日

 8月19日、僕は今日もオオバさんがいる廃墟へ向けて歩く。午前中から待ちきれず、早く着くために競歩に近いレベルの速さで歩いていたが、オオバさんに会えるという嬉しさから来る高揚感による熱さとまだまだ照りつけてくる日差しの暑さの二つに挟まれ、僕の額や体からは徐々に汗が滲み出す。

出てきた汗は額から顔へ向けてたらりと流れたりインナーなどに染み込んで冷たさを感じさせたりしていたが、オオバさんに会いたいという気持ちが僕の中で強くなっていたため、その程度であれば気にならなくなっていた。


「……早く、早くオオバさんに会わないと……」


 熱に浮かされたような声が僕の口から出てくる。いや、実際に熱には浮かされているのだ。オオバさんへの恋心という熱に浮かされ、オオバさんに対して愛を囁く。それが僕にとっての幸せなのだ。

あの豊満でしっかりと肉付いた体は僕を魅了してやまず、僕の愛撫や欲求のままの動きにオオバさんは僕を褒め称える嬌声で更にその興奮を高めてくれ、回数を重ねる度に増えていく体力と性欲を受け止めるために特別な薬まで飲んでくれているため、僕がオオバさんの虜になるのもおかしい話ではないだろう。

もちろん、テレビを観てみればもっと男性達を魅了するような体をしている女性や言動で男性達を誘惑しているような女性は幾らでも見つけられる。

だけど、僕にとってはオオバさんの方がそんな女性達よりもずっと価値がある。女性経験がまったくなく、異性の体についても何も理解していなかった僕に実技という形で色々な事を教えてくれ、ただの子供だった僕を一人の男にしてくれたオオバさんだからこそ僕はここまで入れ込み、こうして何度も会いに行く程にその肉体や内面に惚れているのだ。

そうしてオオバさんの事について考えながら歩く事十数分、いつものようにオオバさんがいる廃墟に着き、縁側まで入ってみると、縁側では胸元が緩い白い服を着たオオバさんが美味しそうに缶ビールを飲んでいた。


「オオバさん、こんにちは」

「……あら、いらっしゃい。ごめんなさいね、朝からお酒なんて飲んで」

「いえ、大丈夫です」


 僕の返事を聞いてオオバさんは微笑むと、冷えきって表面に幾つもの水滴がついた缶の飲み口を自分の口へと近づけ、入ってきた冷たいビールをゆっくり飲んでいく。

喉をビールが通っていく度にオオバさんの喉はゴクリゴクリという音を立てながら動き、暑さで滲んだ汗がその震動で服の中へ消えていくと、その姿が爽やかだがあまりにもいやらしく見え、オオバさんがビールを飲んでいる間、その姿に僕はオオバさんが“別の物”を飲んでいる姿が重なってしまい興奮しっぱなしだった。


「お、オオバさん……」

「……ふふっ、良いわよ。もうお酒は飲み終わったし、飲酒と気温で熱くなってきたから少し涼みましょうか。まあ、もしかしたらもっと熱くなっちゃうかもしれないけどね?」


 ウインクをしてから唇についていたビールの泡を舌でペロリと舐めるその姿がセクシーだったため、僕は今にもオオバさんに襲いかかってしまいそうになったが、どうにかそれをグッと堪えた。

そして昨日と同じように服を脱ぎながら縁側に上がった後、僕はパンツ一枚の姿で脱いだ服を持ちながらオオバさんに体を擦り付け、その姿を見たオオバさんがクスリと笑ってから和室に入り、少し強めに破れ障子を閉めた。

その日のオオバさんは飲酒で気が大きくなっていたからかいつもよりも動きも激しくて声もより甘くなっており、オオバさんの吐息に混ざったアルコールの匂いとそのいつもとは少し違うオオバさんの姿に僕は酔いしれていった。

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