8月10日

 8月10日、僕は部活仲間や水泳部の女子達と一緒に地元で最近人気のプールに来ていた。流れるプールや温水プール、ウォータースライダーなどもあるアトラクション的な場所で人気があるからか他のお客さんの数も多く、部活仲間達の表情もワクワクした物になっていた。


「前から話だけは聞いてたけど……これはすごいな」

「そうだね」

「けど、本当にすごいのは……」


 部活仲間の一人がそう言いながら女子達に視線を向ける。部活仲間達が期待していた通り、女子達はいつものスクール水着じゃなくビキニやパレオといった少し気合いが入ったような格好で、部活仲間達がそれを見て鼻の下を伸ばす中、白のワンピース水着姿の若宮さんが僕の目の前に立つ。


「な、夏野君……に、似合うかな?」

「え……」


 突然の質問に僕は戸惑う。男子からの人気も高い若宮さんが僕に水着が似合うかを訊いてきたのもそうだけど、正直似合うかどうかなんてどうでもよかったのだ。

僕が本当に来たかったとすればオオバさんとではあったし、多少発育が良い若宮さんでもオオバさんに比べたら雰囲気も体つきも本当に子供っぽさしかないため、答え方に困ってしまったのだ。


「あー……えっと……」

「もしかして似合わない、かな……?」

「いや、そんな事は──」

「おいおい、なに照れてんだよ、青志!」

「青志、聞かれたんだからぱっぱと答えろよ」

「あ……うん、似合う……と思うよ」

「そっかぁ……」


 戸惑いながらの返事でも若宮さんは安心したように微笑んでおり、その姿に男子達はまた鼻の下を伸ばし、女子達は若宮さんに良かったねとかここからだよとか言っていたけど、僕は答える事が出来た事に安心していた。

若宮さんの水着が似合っているかはどうでもよく、雰囲気を悪くしたくないから答えただけで、本当はオオバさんのまた違った水着姿を見たりドキドキしたりしたいだけなのだ。

そうしてオオバさんの水着姿や水着から覗くしなやかで色っぽい肢体を想像していたら、興奮し始めており、若宮さんは僕の様子に気づいたのかチラッと全身を見た後に少し顔を赤くしながらそっぽを向いた。

その行動の意味はわからなかったけれど、みんなと一緒にいる時にオオバさんの事を考えていたのがバレてないようだと感じて僕がホッとしていると、部活仲間の一人が僕達を見回しながらニッと笑う。


「よっし……それじゃあ今日はおもいっきり遊ぶぞー!」


 その声に僕を除く全員が答えた後、みんなは歩き始め、若宮さんはスッと僕に近づき、手を差し出してきた。


「行こっか、夏野君」

「え……ああ、うん……」


 オオバさんの事を考えてボーッとしていた中で僕は手を取りながら答え、ゆっくり歩き始める。本来ならば、水着姿の異性と手を繋げて喜ぶべきところなんだと思う。

だけど、オオバさんについて考えたい僕にとってこうして何かと近寄ってくる若宮さんの存在は邪魔でしかなかった。

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