8月5日
8月5日、変わらず僕の足はオオバさんの元へ向かう。これまで一緒に出かける友達がいなかった僕がこの五日間欠かさずに外に出ている事に母さん達は喜んでいる。
もちろん、名前しか知らない女性の家に行って、甘くて熱い時間を過ごしているとは言えないので、最近知り合った同年代の友達と待ち合わせているからと嘘をついているから、それを信じた上で喜んでいるのだ。
正直、両親に嘘をつくのは心苦しい。けれど、オオバさんの話をしたら、そんな関係は良くないと言われ、最悪引き離されてしまうのがオチだ。だから、今日もまた嘘をついて僕はオオバさんの元で数時間だけの熱さで心までとろけに行くのだ。
そうして歩く事十数分、件の廃墟へ来てみると、そこには縁側に座りながら白いアイスキャンディーを食べているオオバさんがいた。
「オオバさん」
「……あら、いらっしゃい。最近、ずっとウチに来てくれるけど、お母さん達は不思議には思わないの?」
「それは大丈夫です。同年代の友達と待ち合わせているからと言っているので」
「そうなの。でも、嘘をつくのは良くないわね。嘘つきは泥棒の始まり、なんていう言葉もあるしね」
「……それはわかってます。でも……僕はオオバさんに会いたいんです。ここまで好きになれた人は……オオバさんしかいないから」
「青志君……」
俯く僕の耳にオオバさんの綺麗な声が聞こえてくる。オオバさんに言った言葉は真実だ。出会いが突然で出会ってまだ間もなくても、僕の心の中には既にオオバさんしかなく、オオバさんから拒まれたら僕はどうしたら良いのかという不安に押し潰されそうになった。
そうして俯き続けていたその時、僕の頭に何か柔らかい物が触れ、顔を上げてみると、そこには僕の顔に押し付けるかのように触れている白い服に隠れた大きな双丘があり、その上ではオオバさんが微笑んでいた。
「そう言ってもらえて嬉しいわ。私も青志君の事は大好きだもの」
「ほ、本当ですか……!?」
「ええ、本当。だから、これからも遠慮せずにいらっしゃい。そもそも私とあんな事やこんな事をしてる時点で悪い子だものね」
「悪い子でも良いです。オオバさんと一緒にいられるなら、僕はもっと悪い子にもなります」
「ふふ、そこまではならなくても良いわよ。さて……それじゃあ今日も上がっていってもらおうかしら。実は今日もちょっと着替えを手伝ってもらいたいのよ」
オオバさんが僕から体を離してみると、日差しと気温で溶けたアイスキャンディーの雫が胸元や服の襟辺りに垂れていて、その白濁とした物を見てある物を連想してしまった僕はドキリとしてしまった。
「お、オオバさん……」
「このままだとべたつくし、冷たいままなのよね。だから……青志君、洗ったり温まったりするのを手伝ってくれる?」
「……もちろんです」
「ふふ、ありがとう。それじゃあ行きましょうか」
「はい」
そうして今日も僕は縁側に上がり、そのまま和室へと入って少し破れた障子を閉めた。因みに、アイスキャンディーは氷を敷き詰めたクーラーボックスに保存しているらしいが、オオバさんはあつくなった後に食べた“少し温め”の棒キャンディは極上だったと布団の上で汗まみれになりながら笑っていた。
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