十六件目 良妻賢母
久しぶりに聞く小鳥のさえずりと、少しだけ寒く感じる洞窟の中に差し込む陽の光の刺激を受けた瞼が開く。あぐらをかいて寝ていたからか、少し足がしびれてきたな...。朝からついてねぇな...
そんな事を考えながら、やけに重い右肩を見ると
「あ...そうか。オレ、昨日この女連れて洞窟で...」
‘’隣にはまだ寝ているお岩の姿が。
...でもまぁ、とりあえず手は出してないから平気っしょ。‘’
そんな事を考えながら、隣で寝ている女の事を配慮しながらしびれた足を伸ばす。
「...一応此奴起こしといたほうが良いか。つかマイズミに何も言ってねぇし。
...けど彼奴のことだから、‘’いつものことだから気にしてないっす〜‘’とか言ってきそうだけど...」
‘’朝から何でマイズミ、マイズミ、と呟かなくてゃいけないのか、別にアイツのことだから、オレがいなかろうが町内放送感覚で気にしてないだろ‘’と思いつつも、最初会ったときから今に至るまでには一切見せなかった満面の笑みを浮かべて、隣で幸せそうな表情をしながら寝ている女の顔を、優しくつつきながら夜明けを告げる。
「起きろ、お岩。...オレ確か彼奴に何も言わずに此奴と散歩しに行っちまったからよ、お前との散歩が嫌とか言ってるわけじゃなくて、一旦彼奴の安否確認しに生きてぇから...」
「...?、もう...朝、ですか...」
「嗚呼、よく眠れたか?」
‘’なんか母親みてぇな事聞いてんなオレ。‘’
「はい!!久しぶりに凄くスッキリする夢を見ました...まるで滝行に行ったような...それくらいココロが浄化された気がします」
初対面のときと比べ物にならないくらいの子供のような無邪気な笑顔でオレの顔を見てくしゃっとした笑顔を向ける。
「おう、そうか。んで、どんな夢見たんだよ。ちょっと気になるからもしお前が良いなら、聞かせてほしいんだけど。」
そう言って先程まで伸ばしていた足を再びあぐらをかく姿勢にして、絵本の読み聞かせを楽しみにわくわくしているガキのように女の目を見つめる。
「えっとですね、
夢の中でなんと...あの男に復習する夢を見たんです!!
でも最初に潰したのは隣で寝ていた女の方なんですけどね...感覚が凄くリアルで...生々しくて...けれどその後、何故か気持ち悪くなってしまったので、慌ててその女とナイフを持ってすぐそこの小川のような場所に来て...」
「へぇ...ちょっと楽しそうに語る路線がオレにはあまり理解できねぇが...良かったな、幸せそうで。」
そう言いながら、洞窟を出ると
「お、恐神先輩。お久しぶりっすね。」
「あ、あんたここにいたの?
というか刺すときは合図くらいしてよ...一応ギリギリでボクの刺された場所とあの男の急所で繋げたから、ボクは無傷だったけどね〜」
「すんません...全然記憶ないんすよ〜
んでも悠寿さんよくあの瞬間で彼奴の方に移動させれたっすね...」
なんていうコメディ映画のワンシーンのような、夢かなんかじゃないのかと錯覚するような出来事と共に、無事お岩の依頼を終了した。
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