2-15:決戦前夜
東都の城、魔王や魔法使いが住んでいそうな西洋風の城の一室。
アマリリスによって貸し出されたその部屋でグリーンは明日の準備をしていた。
「ホーノットから改めて買ってきた薬と、クスリとお菓子とお茶……あとは建物破壊用の爆弾……。」
そんな時、扉をノックする音が部屋に響く。
「女王陛下がお待ちです。」
こうして東都のデスティア達の言葉を聞いていると正しいマナーとは全然違うなぁと思う。
確かに現実世界とは別の文化が根付くものだろうが、無礼に感じる。
「オーケィ。すぐ行くと伝えてくれ。」
向こうも同じなのだろうなと思う。
現実だって同じ、日本語を話せない外国人のバッドマナーは気にしないのに日本語ペラペラの外国人のバッドマナーには厳しい人もいる。許せるかどうかの境界線は人によって違うものだけど、バッドマナーという物は結局バッドマナーなのだ。
そんなことを考えながらアマリリスの元へ向かう。
「きたきた!待ってたよアオバ~!」
開口一番アオバと呼ぶアマリリスにむっとする。
小さな会議室に呼ばれたものだからクロヌリと3人で話すのかと思ったらもう一人男が座っていた。
「よぉ!やっぱ生で見るとすげぇいい女だなアンタ!」
無精ひげに、オシャレ坊主と言っていいのかわからないが剃り込みが入った白髪の坊主頭、クラブにでもいそうな男だとグリーンは思ったが、初対面でそんな風に言うのはどうかと思ったので軽く会釈する程度に済ませた。
「……そういうところが陰キャだって言ってるんだけどなぁ?」
「うるさい、黙ってろアマリリス。」
「我が女王に黙れとは偉くなったな、グリーン。」
クロヌリは平常運転らしい。
「それじゃあ、俺から自己紹介と行こうか!俺の名はセレブリー。あんたとおんなじプレイヤーだ。」
そう言ってウインクを飛ばしてくる男にグリーンは距離を取る。
「おっと、嫌われたかな?リアルの方だとこれで落ちない女はいないんだけどな?」
「それは君が有名人だからだよ。セレブリーなんてあからさまな名前を付けて。」
「そういえばさっきアタシの事、青葉って呼んだよな?ふざけんなよアマリリス!思いっきりほかのプレイヤーの前じゃねぇか!」
いきり立つグリーンをクロヌリが抑えるが、それに答えたのはセレブリーだった。
「いやいや、聞いちまったもんは仕方ねぇから俺のリアルも教えてやるよ?株式会社セレブリーのCEO、兼取締役の須藤創(すどうつくる)だ。これを聞いたらもう俺の女になりたくなったろ?」
株式会社セレブリーと言えばIT系の2代目社長が経営している上場企業だ。
会社規模も日本屈指の大企業。まさにセレブリーという名前がふさわしい有名企業だ。
「……アタシあの社長嫌いなんだよね。滅茶苦茶適当でバラエティ番組とかに趣味で出てるじゃん。部下が可哀そうだといつも思ってた。」
「おいおい、社長ってのが何のために居ると思ってる?“象徴”さ。会社の顔と言ってもいい。社長が有名になればなるほど、IT=セレブリーのイメージが顧客に刻まれるんだよ。実務はやりたい奴らがやればいい。俺はその上澄みをもらって生きる。仕事はやりたい奴に好き勝手出来る環境を与えてやる。日本屈指のホワイト企業って事でも有名なのは俺の手腕によるものなんだぜ?」
「そんなやつがなんでこのゲームに?いや、そもそもなんで東都にいるんだよ?」
「フフフ。それは私が説明しよう。彼はアオバの活躍を見てこちらに志願してきた珍しいプレイヤーなんだよ?言うなれば君に魅せられたと言ってもいい。」
「おっと、そいつは違うな。俺はただ、人を殺しまくれるのはこっちだって思ったからここに居るだけだぜ?ゲームなんてのはストレス解消のためにやるもんだ。1億なんてはした金に必死になってる奴らの気が知れねぇぜ。……現実じゃできないリアルなハンティングゲーム、しかも中身は実際の人間だって言うんだからな。最高だぜ。」
グリーンはセレブリーの言葉にため息をついた。
「……明日はイベントだってのに……悩みの種ばっか増やしやがって……。」
そうしてイベントにおける各々の役割を説明して会議はお開きとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます