1-10:アタシの勝ちだな、ヘンタイボウズ。
グリーンは口の端を歪ませながら振り返ると、こちらを引き留めようとするポラリスに向き合ったのだった。
「アタシの勝ちだな、ヘンタイボウズ。」
グリーンは女性でありながら170センチもあるモデル体型。対してノーナ☆ポラリスは150センチ。男女差があると言っても力はグリーンの方が強い。そしてその力量差によって引き起こされる故意の事故とは。
「へ?」
ポラリスの腕を引き、わざと引き倒し、さらにわざと周囲の椅子を蹴り飛ばす。
ノースリーブの、露になった肩に手をついたポラリスと、ポラリスの下でニヤニヤとしたグリーン。
「キャァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
立ち上がろうとするポラリスの足を払い、その状態を見せつけるように周囲のプレイヤーに助けを求める視線を送る。悲鳴を上げて場所をアピールすることも忘れない。
「何をやっている貴様!」
「痴漢だ!捕えろ!」
「GMコールだ!急げ!」
胸に顔をうずめて赤面したポラリスは状況に気づいたのか必死に弁明しているがもはや手遅れだ。
大柄な男のプレイヤーがポラリスを引きはがすと、できるだけ離れられるようにテントの端まで連れて行ってくれた。
「じゃあな、ポラリス。アタシに声かけたのが間違いだったな?」
小さく呟いてテントを出ていくグリーンの背を睨みつけるポラリスは他のプレイヤーに捕まれて動けない。
それを尻目にテントを出て外へ向かうグリーンはシステムウィンドウから掲示板を開く。
「ポラリスのもってた地図はこれだな?なかなか便利じゃねぇか。」
今頃ポラリスは誤解がとけてこちらを探しているかもしれないと思うとダンジョンにでも移動するのが正解かもしれない。
しかしそれは普通のプレイヤーであればのことだ。
グリーンはそもそもこのゲームに“攻略する楽しみ”を求めていない。
あくまでも、このVRMMOという世界に“旅”をしに来た女だからだ。
「さぁ、まずは手始めにあの山を目指すか!」
南は宗教都市があるのだったか、しかしその手前にそびえ立つあの山の頂上から見える景色は一体どんなに素晴らしいものだろうか。
「バトル。」
手の中に現れた半透明の杖を突きながら一歩一歩進んでいくグリーン。
ウィンドウで掲示板を眺めながらテクテクと進んでいく彼女の行く末は一体どんなものになるのだろうか。
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