第4話 突然のゲームオーバー
でこぼことした峠の道を歩くことしばらく……ミユキと雑談なんかをしながら整備された道を歩く。
「そういえば、エルフの里に行くって言ってたが、俺の中のエルフ像は、よそ者は絶対に受け入れないって種族なんだけど」
「リーンの里のエルフはそうですね。 ですが、テルモピュリーは国境付近にある街というだけあって、異国の種族がたくさん立ち寄るので、多様性を良しとする人々が集まる場所なんですよー」
「なるほどね、人間と同じで、一口にエルフといってもいろんな人がいるんだな」
そこは現実とおんなじだ。
「そうですね。 ですがエルフは確かにリューキ様の言う通り、比較的自分たちを至高の存在と認識する傾向にあるのも事実です」
「そうなのか? なんで?」
「長寿であり、何よりも他の種族に比べて神に近いというのが理由でしょう。 これは歴史に関係する物なんですが……エルフの中でごくまれに生まれるハーフエルフというのが……」
そう、ミユキ先生の歴史の授業が始まりかけた瞬間。
【ぎゃああああああああああああああああああああああ!!】
空が割れるのではないかと不安に思うほどの轟音が響き渡り……俺は慌てて耳をふさぎあたりを見回す……。
「な、なんだ今の!?」
「あぁ、今のはドラゴンの鳴き声ですね」
慌てふためく俺とは対照的にミユキは特に気にする様子もなくそうあっけからんと言い放つ。 まるで聞きなれたものだと言わんばかりだ。
「ドラゴン?」
「ええ、ここら辺は、レッドドラゴンの縄張りですので」
「おいおい、今の声結構近かったぞ? まずいんじゃないのか?」
ドラゴンなんて、こんなレベル一の状態で見つかったら何をどうあがいても生き残れないような化物だろう……。
それがこんなに近くにいるという事実に俺は恐怖を覚えるが、しかし美幸はいたって冷静のまま。
「大丈夫ですよ、歩道は基本縄張りに触れないように作られてますし。 ドラゴンは賢いので、歩道を歩く人間を殺すことはありません」
「そ、そうなのか? なんで?」
「むやみやたらに人を殺したら、討伐隊や騎士団、冒険者が自分のことを殺しに来ることが分かっているからですよ」
「そ、そうなのか?」
「ええ、ドラゴンといえども、エルフ族の魔法はで強力です……各個撃破ならまだしも、群で来られればドラゴンといえどもなすすべはありません。 現に、この峠は隣の竜人族の国からエルフの国に入るルートで最もメジャーなルートですし? 毎年二千人くらいはこの道を利用しています」
日本人の性か、それともミユキの奴が説明をするのがうまいのか……どうにも数字で示されるとすぐに納得してしまう自分がいる。
「ドラゴンは人間も食うイメージがあったけどな」
「大昔の話です……まぁでも、縄張りにずかずか侵入したりすれば怒って殺されますけどね……ですがこの道は縄張りから離れるように作られています……ドラゴンに襲われるなんて、この場所ががけ崩れを起こして、ついでにドラゴンの頭の上にでも不時着しない限り大丈夫ですよー!」
「そうかー! あははは」
笑いながら冗談を漏らすミユキ……俺もその冗談につられて、安堵も含めた笑いを零すが……。
【ばきり】
「へ?」
先ほどのドラゴンの泣き声とはまた違う、今度は無機質な音が響き渡り。
同時に俺の体は謎の浮遊感えを覚え、足元を見ると先ほどまであった大地はなぜか消えており、代わりにはるか下に森が緑々と広がる。
一瞬思考が真っ白に染まり……ほんの少しのエラーの後状況を理解する。
どうやら崖が崩れたらしい。
「うっそだろおおおおおおおおぉ!!?」
理解が追いつくと同時に絶叫を上げるがその声はむなしく空に響き、峠に木霊をするだけ。
転生してからおよそ3分……予想よりも早いゲームオーバーだ。
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