ヨハネ聖騎士団 最後の聖騎士達
シャルルードーブルゴーニュ
第1話 さようならロードスの騎士団そして始まりのヨハネ騎士団
1444年1月1日。
我々ロードス騎士団の第3代総長でもある、ジャン・ボンパール・ド・ラチック老がお隠れになるとの私の耳に入って来た。
従者が私に至急ジャン老の元へ赴くようにとの事だ。
「おぉ、、ヨハネ!我が愛しき弟子よ」
御年73歳のジャン老はベットに臥せったまま、このまま天の国に旅立とうとしていた。
35歳から騎士団の総長に就任すると、38年にも長きキャリアを持つまさにグランドマスターの称号に相応しい男である。
ヨハネは16歳から従者として、ジャン・ボンパール・ド・ラチックに38年仕え始め既に私は54歳。
私もいつ死んでも不思議ではない年齢にいつの間にか到達してしまったようだ。
「ヨハネ、、よ。ワシが長生きして、、お主に世代交代が遅れたことを誠にすまぬ」
ジャン老はヨハネに手を差し出すと、ヨハネははっと我に返ると、ジャン老の手を強く握り返した。
私の師匠が本当に死ぬ。いつもいた偉大な男が今日から消えていなくなる。
「いえ、、」
ヨハネは言葉が出なかった。先代を安心させる言葉やヨハネの実績や功績を、雄弁の限り尽くして語りたいのに情けない事に言葉が出なかった。
「ヨハネよ!お前は本当に優秀な人間だ!騎士団の問題を解決し騎士団に栄光をもたらせ!、、グゥ、、ヨハネよ!今日からヨハネ騎士団を名乗れ!、、お前の時代は今から始まる、、うっ、、ヨハネ騎士団に栄光あれ!!」
享年73 ジャン・ボンパール・ド・ラチック。ロードス島にて死す。
小さな教会にグレゴリオ聖歌が歌われた。
有力な権力者やヨハネ達は故郷のフランスの歌である、グレゴリオ聖歌でジャン・ボンパールド・ラチックを賛美し送り出した。
そして修道士による洗礼式を受けて、第1第代聖ヨハネ騎士団総長のヨハネス2世がここに誕生した。
「「団長!ご命令を」」
ヨハネは号令を出す。
今や騎士団で馬を操るものは稀である、操るのは艦船。彼らは16隻からなる艦隊を率いてアドリア海を出発した。
ロードスの騎士団には様々な凌ぎがある。
税金、工業、交易、そして奴隷狩りである。
ロードス島の貧弱な経済力では、軍隊や艦隊を維持するのは非常に困難を極めた。
税金と産業の収入を合わせた月の収支は金貨0.37枚。
出費は金貨2枚。
毎月金貨1.63枚の赤字を垂れ流していた。
しかも出費は増える一方なのに収入はまったく増えなかった。
騎士団そのものが崩壊してしまう異常事態に打開策を打ち出したのが先代である。
艦隊で沿岸州を略奪し収入にしてしまおうということである。
だが、同じ宗派の州では略奪は行わない、あくまで異教徒の土地のみを収奪するのであるから、許される行為である。
ロードス島を起点に、時計回りで沿岸沿いを航行しマルタ島に帰還をする。
そのルートと言うのが、GULF OF SATALIA→GULF OF CYPRUS→PALESTIAN CCOAST→BAY OF ALEXANDRIA→GULF OF BOMBA→GULF OF SIRTE→IONIAN SEA→GULF OF TARANTO →IONIAN SEA→AEGEAN SEA→SEA OF MARMARA→GULF OF VARNAを10年のクールタイム期間を経て略奪するのが我々の凌ぎである。
”騎士団のガレー船に乗りたいものは後を絶たない。なぜなら彼らは航海が終わったら大金持ちになるからさ”
酒場での噂は騎士団の艦隊でいっぱいになる。彼らはとんでもない額を稼ぐことで有名なのだから。
「今回の遠征での稼ぎはヴェネチアンダカット金貨で380枚。徴集した水兵が3000人か」
ヴェニスの商人の前に引き渡した奴隷や金銀財宝、または香辛料など様々な物品を全て売却した利益が金貨380枚。
この商売はヴェネチア共和国においても無視できる額ではないので、彼らはヨハネ騎士団を保護領として宣言している。
彼らヨハネ騎士団に手を出した国は、地中海最強の海軍国家が相手になるという事だ。
遠征から帰還した、初代ヨハネ騎士団総長であるヨハネス2世は自分の権力を行使して、国内の構造改革に着手する事を決めた。
かねてより国内事情に不満があり、改革を推し進めたかったが、資金難や先代の方針により据え置きにされていた。
資金が潤沢にあるうちに国内の事情を一気に進めようという魂胆である。
問題の1つは、我々ヨハネ騎士団は、南フランス生まれの南フランスのオック語を公用語と話す。
オクタニアの文化はここロードス島で受け入れられていないのが実情である。
現地民はほぼ全員がギリシャ語を話し、ギリシャ文化を当たり前のことのように生活をしている。
そのせいで、騎士団員と現地民では争いが絶えず、現地民の中にはギリシャ帝国である、東ローマ帝国であるビザンツ帝国に帰順させようという反乱を企てようとする者がいる始末である。
ヨハネは団長命令を行使し、3つの有力者勢力の代表者を召集した。
有力な権力者の団体代表者で16歳の若者がそれぞれ召集に応じはせ参じた。
貴族、聖職者、商人の団体である。
「ヨハネ騎士団 総長のヨハネス2世の名のもとにここに宣言をする。各々の意見で有効な方針を示した者を次期総長の後継者として任命をする。ヨハネ騎士団の土地の40%は総長の個人的な資産として、享受することが出来る。各々今後の方針について意見を述べるががいい」
彼らはヨハネス2世に後継者として指名されると、16歳から従者としてヨハネス2世に付き従い、ヨハネスが死ぬと彼らが総長として就任する仕組みである。
地元貴族代表「アントニウス・エマニュエル・ド・ラ・ファイエットと申します。」
アントニウス・エマニュエル・ド・ラ・ファイエットは貴族の権利を主張を説明し始めた。
「まず、我々の祖先は南フランス貴族です。十字軍遠征での功績により、この土地を得る権利を獲得しました。当然ロードス島の土地の大部分を得られる資格があるのです」
アントニウス・エマニュエル・ド・ラ・ファイエットの演説は続く。
「我々にいくつかの特権をお与えになれば、維持費の高い正規兵の雇用費用や維持費は我々が一部負担し、軽減させることをお約束します」
「治安の悪化や反乱軍が発生した場合。もし、万が一我々の土地が占領された場合我々は終いです。ヨハネ騎士団は解散する事になるでしょう。」
「ですので、今いる歩兵4000人と騎兵1000人からなる騎士団の正規兵を増やす提案をいたします、我々貴族が追加で2000人の歩兵を徴集致します」
「もし反乱兵が発生した場合の想定戦力は7000人との情報を得ています。同数であれば、我々騎士団の軍隊が勝つことをここに宣言いたす所存です。」
貴族の意見によれば、軍隊の正規兵をさらに増やして徴兵せよという話である。
国内に不穏な影の情報を掴んでおり、具体的な敵の想定人数まで予測するとは見事である。
常備軍を増やす案は採用である。
地元豪商の息子「アントニウス・エマニュエル・ド・ヴェルジと申します」
アントニウス・エマニュエル・ド・ヴェルジは自分達商人の権利を主張し始めた。
「まず、我々商人の先祖は聖地エルサレム奪還を目指した際の、船の手配や、個人所有の船での輸送や海戦を手助けした功績を認められて、この土地を得る権利を得ました」
「我々にいくつかの特権をお与えになれば、見返りとして土地を開発する手助けを致します。そして、我々が交易で得た利益に対して10~20%を割り増しして国庫に納めさせて頂きます」
「騎士団の財政難は我々商人は把握しております。毎月ヴェネチアンダカット金貨1.03枚の赤字を現在起こしています。その財政赤字を軽減、もしくは解消する事が出来きます。まずは手始めに出費の多い要塞を解体しましょう。」
「そして外からの侵略に対する対策として船を造船します 具体的にアーリーキャラック船を1隻造船し、ガレー船を4隻造船します。」
商人の意見は外敵に対する防衛戦力の強化として、海軍力を強化しろとの話である。
この話は非常に一考すべき余地があり、資金のあるうちに最新艦である重戦艦を建造するのは理にかなっている。
そして要塞を解体せよとの事であるが、要塞が解体しては敵が占領しようとした際一瞬で占領出来てしまい憂慮すべき問題ではないか?
だが、どのみち外敵が上陸した時点で、我々は敗北したのと同義であるしな。。
国内の反乱兵に対しても防衛策が講じられぬ。
いやいや、そもそもの話。国内に反乱がおきること自体おかしいのか。。?
才能ある神学者「ヨハネス・ド・モンテスキューと申します」
「まず、我々聖職者は現在土地を所有しておりません。」
「我々にいくつかの特権をお与えになれば、見返りとして税収を増やす手助けや、聖職者の忠義心を増やすことが出来るでしょう。聖職者の忠義心が増せば騎士団の威信も増加し、騎士団はならず者の集団ではなく、名誉ある集団であると周りや我々自身が認識し、より強固な集団となりましょう。」
「我々カトリック教会は現状の問題点を把握しており、それを解消させる術を心得ております。我々をより強固な集団にまとめ上げるには宗教の統一性が重要であり、現在国民の100%はギリシャ人であり、ギリシャ正教を国民の全てが信仰しています」
「まず、我々はオック語を捨てなければなりません。国民全てにオック語を習得させる労力は非常に大変であり、国内で反発する事でしょう。我々はギリシャ人として生きていくためには現在の都市力をロンドン、ナポリ、シエナ並に開発する必要があります。そして主要な文化が国民にギリシャ人だと認めてもらえれば、国民がカトリックに改宗する気が起きるでしょう」
フランス人の我々がギリシャ人として生きるだと・・?
あぁそうか。
「ヨハネス・ド・モンテスキューよ。国の主要文化や宗教が変われば国民は忠誠を誓うのだろうな?」
「えぇ、勿論です。上層部や特権階級が文化や風習の違うものが、同じ地域で認められるはずもありません。我々はギリシャ人として同化しギリシャ人としての誇りを持って生きていかなければなりません」
「ならばやって見せよ。聖職者には土地と特権を与える。そして次期総長にはヨハネス・ド・モンテスキューを指名する。何としてもやってみせよ」
そう、我々ヨハネ騎士団はカトリック教会の擁護者であり、カトリック教会の聖騎士団なのだ。
だから断じて異教徒は認めぬ。
1462年
今やロードス島のはただの島ではなくなった。
開発を続けてヨーロッパ屈指の都市にまで成長し、国民の全てはカトリック教会を信仰しようとしている。
その功績を認められて、教皇庁からの支援も得られる約束も得ていった。
だが改宗によって月の赤字額はさらに増加し毎月金貨2枚を消費する事となった。
軍備も増強したことにより、赤字額は常に増え続け国庫はもはや底をつきそうな勢いであった。
その折に、カラマン公国が一方的にヨハネ騎士団をライバル視し、外交的な侮辱を宣言した。
ヨハネ騎士団はこのこの出来事をチャンスと捉えていた。
彼らと戦争し海上を封鎖すればドックの置物である艦隊が金を生み出すチャンスではないか?
敵はカラマン公国とその同盟国であるカラコ・ユンヌ、マムルーク王国であるか。。
問題なのはエジプトの雄であるイスラーム王国のマムルークである。
彼らはアレキサンドリアを終点としてインドの交易品で大儲けをしていた。
コロマンデルやグジャラートの物品をアデン湾に送って、最終的にはエジプトで裁くのである。
そして彼らは巨大な利益を背景に大艦隊を有していた。
そんな彼らを同盟網で釣りあげて、アレキサンドリアを海上封鎖して儲けようと考えた。
敵に巨大な艦隊を有する国家を呼ぶなら、こちらも呼べばいい。
保険としてヴェネチア共和国に参戦要求を送る提案をした。
地中海のカトリックの覇権国家とイスラームの覇権国家の戦いが始まったのであった。
戦いはあっさり負けてしまった。
いや、負けの定義によるのであろう。
ヨハネ騎士団の中ではこの戦争は負けてはいないが、勝っても居ない戦争であった。
敵の意見によると我らの領土は占領されてはいない、よって負けているわけではない。
ヨハネ騎士団の意見としては、海上封鎖によって敵の戦争感情は悪化しており、国内の治安の悪化も進行していた。
こちらの意見としては金貨400枚で手打ちにしても良いと言うものである。
そしてこの戦いは双方の意見の対立から、70年時を経るまで終戦する事は無かった。
海上戦闘の決着はあっさりと片が付いた。
マムルーク艦隊は、アレキサンドリア沖でヨハネ騎士団の強襲を受けて敵艦隊は撃沈+撤退+拿捕である。
もうこうなってしまってはマムルーク艦隊は自国のドックに引きこもるほかなく、キプロス湾岸+パレスチナ沿岸+アレクサンドリア入り江+ボンバ湾岸+サート湾岸
この全ての沿岸をヨハネ騎士団は完全に海上封鎖してしまった。
そして、パレスチナ沿岸の海上封鎖の収益が馬鹿にならないほど大きく、聖地巡礼やアレッポの商人から通行税を徴集するでかなり旨味があった。
国民の不満と同盟国の不満に焦ったカラマン公国は和平案を提出。
金貨70枚の支払いで手打ちにするとの事だ。
それに対してヨハネ騎士団のヨハネス2世の回答はこうだ。
「馬鹿め!」
これに怒ったカラマン公国とマムルーク王国とカラコユンヌ朝は80000人にも及ぶ大軍勢を率いてヴェネチアに侵攻していった。
ヴェネチア共和国は成すすべもなく領土を占領されていった。
弱り目に祟り目弱った犬を棒で叩けとのことわざがあるように、弱ったヴェネチア共和国にオーストリア=ハンガリー大公国がイストリア獲得の宣戦を布告。
そうしてヴェネチア共和国の領土は引き裂かれていった。
ヨハネ騎士団は、ヴェネチア共和国にたいして申し訳ないと思いながらただ眺めていることしかできなかった。
陸軍が4000人しかいないのに80000の相手など逆立ちしても無理である。
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