第6話 18年ぶりの開門

「開門の申請が通ったぞ」

海老沼が携帯を耳から離し、皆に呼びかけたのを合図に一同が護送車に乗り込んだ。重苦しい音を立てながら金属でできているであろう巨大な扉がゆっくりとスライドした。実に18年ぶりの開門である。

「ん、また扉?」

秀斗が呟いたとおり扉が開いた奥には同じ構造の扉がそびえていた。1つ目の扉が軋むような音とともにゆっくりと閉まり始める。調査員たちは闇に視界を奪われていく。

「あたしたち閉じ込められたの?」

カレンが不安そうに尋ねる。

「安心しな、できる限りウイルスの侵入を防ぐために門の扉は2枚構造になっているんだよ」

桝田が笑いながら言う。

「そっか、桝田さんたちは以前のことを覚えているんだ」

1枚目が完全に閉まりきってから少しして、2枚めの扉が開き始めた。今度は隙間から光が差し込んでくる。光の筋はだんだんと太く大きくなっていった。それはまるで希望の光が彼らを包み込むかのように。扉が完全に開き切り、視界がひらけると眼前に広がっていた景色は、そんな期待からはおよそかけ離れたものであった。


荒れ果てた道路は至るところから雑草が生い茂っている。入口付近は入場手続きのためにいくつかプレハブのような建物が建てられていたがそれらもツタに覆われ、サビつき、半壊状態である。

「こりゃあ、ひでぇなあ」

桝田が吐露した。護送車はもはや道とは呼べないような道を揺られながら進みだした。




「よし、ついに外に出たのね、『いまから東京に向かいますよー』っと、はい、投稿、って電波飛んでねえじゃんかよ!!!」

門を出てしばらく経った頃、カレンが怒号を上げた。

「なんだ千葉、知らなかったのか?アマテラス外は電波なんてもう飛んでないぞ」

海老沼がさらっと言った。

「そんなの知ってるわけないじゃない!なんとかならないわけ?」

「残念だがどうしようもないな」

海老沼が言う。カレンが席に座りながら地団駄を踏んだので一層車が揺れた。

「任務に支障はきたさないのか?」

桝田が問う。

「ああ、その点は問題ない、この車は政府専用電波を搭載しているからいつでも厚労省と通信できる、それにタブレットも配ってあるだろう?」

「じゃあ、その電波を使わせなさいよ」

と言っただろ、政府のサーバーとしか繋げられない」

カレンはほぼ半べそ状態である。

「ネットに繋がらないならあたしは何のために志願したって言うのよ〜!」


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メシアの逃避行 遠宮ナギ @toumiyanagi

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