2話 足音の正体
「おや、学校の屋上は立ち入り禁止だけど…」
「えっ?もともと空いてたから知らないっ」
足音の人物は屋上へ到着するなり、郁利へ不思議そうに問いかけた。
すらっとした体型の男性で高身長だ。
「っていうか君は屋上に来てもいいの?」
「あぁ、自己紹介していなかったね。私は
立ち入り禁止と知りながら入ってきた人物を不審に思い郁利が訊ねると、彼はこの高校の生徒会長だと言うではないか。
「ふーん、生徒会長なんだ。」
「ほう、ご機嫌ななめのようだねぇ。それになんだか悲しそうだ。」
「っ!そんなことないよ!」
郁利はその人物に言い当てられると、急いで袖口で涙を拭った。
やはり先程のことが悲しかったのだろう。
「とりあえず屋上の鍵を返してほしいな。」
「ちょっと子供扱いしないでよね!僕は持ってないってば!」
その様子を見た彼はしゃがみ込むと、郁利の頭をよしよしと撫でる。
そして鍵を返却するように手を差し出した。
郁利は頭を撫でられたのが気に入らなかったのか、すぐさま反抗をする。
「それならポケットを見せてくれるかい?」
「いいよ、ほら…ってなんで鍵が!」
なかなか応じない相手にその人物はポケットの中を見せるように促すと、郁利はすぐさま応じた。
しかし彼が想像していたのとは、異なる事態となってしまう。
「やっぱり、君がこっそり持ってきたのだろう?悪い子だねぇ。」
「違うよ!僕は何も知らないって!…アイツ、僕に罪をきせたな。許さない。」
鍵がポケットから出てくると、郁利は驚きを隠せない様子だったがすぐに犯人は思い当たった。
少し前に一緒に食事をしていた人物だ。
「おやおや、鍵が出てきたのにまだ反論するのかい?往生際が悪い子だ。」
「だって僕じゃないもん!さっき一緒にいたアイツが僕のポケットに入れたんだよ。」
生徒会長は証拠が出たにも関わらず、罪を認めない彼に問い詰める。
郁利は自身がやってないという確信がある為、なかなか引き下がらない。
「仕方ないねぇ、罪を告白しないのなら生徒会室へ来てもらおうかな。」
「ちょっと待ってよ!えーと、屋上には防犯カメラがついてるでしょ。それを見たら犯人が誰が分かると思わない?」
そんな彼の様子に、彗は戸惑うこともなく余裕の表情で言葉を返す。
郁利は生徒会室へ連れてかれてはマズいと思ったのか、周りを見回して発見した防犯カメラを確認するように促した。
「ほう防犯カメラか。仕方ない、君がそこまで言うなら確認しよう。」
「やった!」
「ただ、君の疑いが晴れたわけではないからね。」
「えー」
やっとのことで彗説得することは出来たが、状況は依然として生徒会長の方が優勢のようだ。
「防犯カメラを見るのも時間がかかるからね、明日の昼休み生徒会室へ来てくれるかい?」
「結局行かなきゃダメなのかぁ…分かったよ。」
最終的には取り合ってはもらえたものの、生徒会室へ行くはめになり郁利はがっくりと肩を落とす。
「じゃあ明日待っているよ。」
「はーい…」
彗は彼の様子は気にも止めず、屋上から立ち去って行く。
郁利もしばらくして屋上から出ると、なにか良いことを思いついたのか足取り軽く教室へと戻っていった。
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