綺麗な青薔薇には棘がある

KeeA

平 凡子

第1話 転校生がやってきた

 高校二年生、平凡子たいらぼんこ。名前からも分かる通り、ごくごく普通の女子高校生。いつもの朝。いつもの月曜日。いつもの教室。いつもの日常。葉桜が美しく咲く季節。


「皆さん、席についてください、今日は転校生を紹介しますよ~」


 転校生が教室に入った瞬間、


 すっ、さらっ、きらきらきら~

 

 こんな効果音が聞こえてきそうだった。クラス一同は驚きを隠せず、女子は目がハートに、男子は何とも言えない顔になっていた。手足がすらっと伸びて球体関節人形を連想させるような風貌、陶器製の人形のような肌。なんとなく物憂げな表情が彼のミステリアスな雰囲気を一層際立たせている。彼は、果たして本当に人間なのだろうか? そんなことさえ思ってしまう程に無表情で現れた彼は冷たく、美しかった。閉じていた薄い唇が開いた。


「初めまして。池目伊圭男いけめいけおです。よろしくお願いします」


(エッッッ名前もイケメンッッ)


 伊圭男の妖艶さにやられ、もはや訳の分からないことを女子一同が思っている中、凡子ただ一人が別の考えだった。


(ほ~五千年に一人レベル……)


 ……と、頬杖を突きながら思いつつも、凡子だって普通の女の子。伊圭男のイケメンっぷりにダメージを受けていないわけではない。


「はい、じゃあ平さんの隣の席に座って下さい」


(まじすか。今日が命日かっ……!)


 グッ、と胸ぐらを掴み、女子とは思えないほどの顔面崩壊を起こした。伊圭男はというと、綺麗な所作で椅子を引き、凡子の隣の席に座った。思わず見とれる凡子。はっと我に返り、伊圭男に言った。


「ええと、平凡子です! よろしく! わからないことがあったら何でも聞いてね!」


 さらっ、と前髪が揺れる。


「ああ、よろしく、」


 伊圭男の顔面が眩しい。


「ブス」


 沈黙の中しばらく顔を合わせる二人。そして、伊圭男は何事もなかったかのように前を向いた。


(なんて?)


 いつもの……日常……?

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