第2話 夜にくつろぐノ怪物(ノケモノ)達
食事会がたけなわとなり、木場、
そして酒を飲まない咲と
「茉由、そこは『好きです』って勝負かけなきゃ!」
「はい!……好きって言葉がないですよ?!」
「心を込めて100回ぐらい念じるの!」
「わかりました!好きですう、好きですぅ……」
咲のアドバイスに、ワイヤレススティックを頭上に掲げた茉由。
お祓いのようにスティックを振り回し始める。
そして、その隣では咲が濃厚に、画面のキャラに愛を囁き始めた。
「好き好き好きしゅきぃ!愛して愛して愛して!ふひっ」
「のう、それは呪いを掛け合うゲームなのかえ?」
「何か、色んな子達が集まってきてますね。『私達、呼びましたか?!』って喜んでますが……」
木場は霊を優しく振り払いつつ、咲に注意を促した。
「おい、咲。集まってきたモノ共が『私達と一緒に暮らそう!』って茉由に纏わりついているぞ」
「ひゃあ!だ、だめぇ!茉由には帰るおうちが!」
「ええー?!……あ!ねえねえ!そこのお兄さんイケメンですねえ!茉由じゃなく私なら触り放題、し放題ですよ!ぐっへっへっへー」
茉由に纏わりつく若い男の霊に、両手で胸を強調した咲がウインクをする。
すると。
『ひいっ……』
ぱあああああ。
怯えた顔で悲鳴を上げたその男や周りの霊達が、白い光に包まれて消えていく。
「え?」
咲は目の前で起きた事が理解できず、茫然としている。
「咲、凄いな。今度除霊の仕事が入ったら手伝うか?」
「咲ちゃんありがとう!みんなキラキラと満足そう……に?成仏してったね!」
「ち!ちっがあああああぁぁぁう!!」
●
「私の王子様はどこぉ……咲はここだよぉ……」
虚ろな眼つきでブツブツと呟く咲の頭を太腿に載せ、よしよし、と撫でている梔子が思い出したように言った。
「そういえば、きの……コホ。お館様が『月例会でな?余興で、最近嬉しかった事をひとつずつ聞いて報告してこい』と仰せでしたので、お伺いしてもいいですか?」
昨日、お館様が……と言いかけたのを、咲を見て誤魔化した梔子の言葉に、木場から順に話し始めた。
「俺はお館様から三連休を貰い、湖畔にキャンプをしに行ったな。楽しかった」
「だ、誰と……はっ!わ、私は!お館様と夕餉のご相伴をさせて頂いた事ですっ」
噛み気味の梔子に、首を捻る木場。
それに構わず、日宵が話を継いだ。
「儂は、お館様に『ぬらりひょん』の動きをお褒め頂いた事かのう」
「茉由は、お館様に『お前は私が今までに見た座敷童子の中で、
皆がそれぞれの嬉しかった事を聞いて微笑む。
その話の流れに、木場だけが首を捻った。
(何故に、お館様の話ばかり……。それに、この違和感)
木場が辺りを見渡している所に、咲が参戦した。
「私はお館様に、『お主は巷の口裂けとは一線を画す可愛さよの』と褒められました!」
咲がそう言って梔子の膝の上で笑った。
梔子、茉由が咲の笑顔を見て、顔を綻ばせる。
「……でも、その後が酷かったんですよ!『性根は
「「「「え?」」」」
その言葉に、皆の目が点になる。
咲は話を続けた。
「大体ですよ?お館様がいないからぶっちゃけちゃいますけど!それを言ったらお館様なんて美少女です!みたいに化けてますけど、心はざっくざくのぐっさぐさ!存在がもう歩く罠みたいじゃないですか!」
咲は火が付いたのか、文句が留まることを知らない。
が、他の四人は。
急速に密度を増し、ギシギシと音を立てる空間に冷や汗が止まらない。
(咲……咲!もうその辺りで止めておけ!)
必死に目配せをする木場だが、時、既に遅く。
「……もう出張とか絶対嘘ですよ!どうせ、タップダンスをする私を何処かで」
がっ!
「「きゃー!!!」」
梔子と茉由が叫びをあげた。
咲の頭の傍が揺らぎ、白魚のような手が出現してその頭を鷲掴みにしたからだ。
「ぎゃー!い、痛い!頭がああああぁぁぁ?!」
わるいごは、いねがぁ。
わるい咲は、いねがぁ。
「お館様ああぁ?!痛いです痛いですぅ!全部嘘ですジョーダンなんですよぅ!」
お館、だあ?
おらは、超人なまるはげまる。覚えろ。ぷくくぅ♪
「その笑い方、お館様じゃないですかっ!……ぎゃー!」
20秒後。
咲が失神した瞬間に、自称なまるはげまるの手は消え失せたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます