ひまわり

黒咲蒼

第1話

「部長!奥さんいますし、こんなこと言うのは良くないってわかってるんです…わかってるんですけど!………私、部長のことが好きです。」


奥さんのいる部長にこんなことは間違ってる。


誰だってそう思う。


私だってそう思った。


でも、


でも、



でも、私が信じた私の気持ちには嘘はつけなかった。




私が部長を好きになったのは、いわゆる一目惚れというやつだ。


インターンの日、前日から緊張であまり寝れておらず、さらには寝坊をして急いで企業さんに向かった時だ。


満員電車というのはとてもキツく、最寄りに着いた時には崩れ落ちるように外に出て行った。いや、実際崩れ落ちていたのだが…


それを倒れる前に支えてくれ、そんな私に食べ物を渡してくれたのが、今部長になっている、あの人だ。


一目惚れだった。


気がつくと私はその人のことが気になり、インターン先の人だと知りいろいろ頑張って、企業に入った。


「お久しぶりですね」


彼は覚えていなかった。


最後に私があった時より明らかに痩せてるのがわかり、部長にまで言ったのは相当頑張ったのが一目で分かった。





そんな苦労している彼に私は…




「日向〜。ぼーっとしてるけど大丈夫そう?」


「あ、宇都木さん。大丈夫です。ちょっと今まとめてる資料のデータと睨めっこしてたら数字たくさんで、うわぁーってなっただけですので…」


「あー!わかるよ〜。たくさん数字あると嫌になるよね〜。まあ、なんかあったら相談してくれ!!私、先輩なんだから」


「はい、ありがとうございます」


こんなこと、誰にも言えるわけない…


いや、1人いた…


あの人だけは…


だけは……







私は今日の分の仕事を終わらせて帰宅した。





帰宅した私は、すぐに彼女の前に行って、口を開いた。


「今日、彼に告白しちゃった」


『あら?貴女にしてはなかなか勇気のある行動をしたんじゃない?いつも私の助言を聞かなきゃ何にもできなかったのに』


「そ、それはそうだけど…。でも、自分の気持ちには嘘をつきたくなかったんだもん」


『そうか。まあ、君が1人で頑張るのは私的には嬉しいよ』


彼女のその言葉を聞き、私は今日の疲れに身を委ねて、睡眠に入った。


翌日ポストを見ると、『1人でうるさい』という手紙が入っていた。





私は、会社に行く途中で見た、太陽に向かって咲く、ひまわりがどこか彼に似ているような気がして、遅刻してしまいそうになってしまった。



この日、会社に行くと、私を信じられない事実が待っていた。


『〇〇部長は本日から隣の県の子会社に顧問として移動となります』




信じがたい、事実だった…。


「日向〜。部長移動になっちゃったね…。あの人いい人だったから移動して欲しくなかったね」


「は、はい。とても力になってくれたからとても悲しいです…」


きっと、私が原因だ…


もう、


嫌だ……

























「まあ、あんたが嫌になったら、代わりに私が出てあげるよ。あんたが居て、私がいるから…」



そして、私は数年振りに外に出た。



彼女の壊れた心が、また戻るまで…


私があの子の代わりを生きなきゃ…





私は、昔の傷をそっと撫でた………

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ひまわり 黒咲蒼 @Krosaki_sou

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