しゃぶしゃぶ

「しゃぶしゃぶ食べ放題」

「どうもいらっしゃいませ。お客様、当店のご利用は？ ありがとうございます。初めてですね。では当店の鍋食べ放題コースのシステムを説明しますね。当店は120分一本勝負です。」

「プロレスみたいですね。」

「食べ放題コースはある意味真剣勝負ですから。」

「もっと気楽に楽しみたいんですけど、そんなに気合い入れてかからないとだめなんですか？」

「そうですね、熱湯を使いますし、こちらも生活がかかってるんで真剣ですね。では説明をいたしますね。この取っ手付きのざるにうどんを入れてこちらの大きな鍋でうどんをしゃぶ～しゃぶします。」

「なんか鬼気迫ること言われた気がするけどはい。」

「しゃぶしゃぶしたら各自のどんぶりにうどんを移してください。」

「はい。」

「ご自由にだし、あげだま、刻みあぶらげ、わかめ、ネギ、生卵、生（き）じょうゆなどを掛けてお召し上がりください。」

「はい。」

「こちらが2000円コースの内容で、1000円プラスでてんぷらやいなり寿司も食べ放題になります。」

「はい。」

「当店はどんぶり入れ替え制を採用しております。おかわりが必要な際はこちらのボタンを押していただきますと、あちらのモニターにランダムでお席の番号が表示されますので、新しいどんぶりとうどんをお持ちします。」

「はい。」

「当店のシステムの説明は以上となります。ご質問はございますか？」

「鍋っていうけどこれ実質セルフうどんだよね？ あとランダムで表示される席の番号ってなんか意味あるの？」

「やっぱご質問はなしでよろしいでしょうか。」

「おいちょっと待って。」

「では今からお時間スタートしますね。」

「おいーおいーおいー、人の話を聞いて。」

「カーン(ゴングの音)ではスタートですー。制限2時間となります。終了3秒前にゴングでお知らせします。ではごゆっくりおたのしみください。」

「ちょっと待って、3秒前？ 3秒前？ 遅くない？ 遅くない？ もっと早く教えてくれない？」

「ではそうですね、んー、折り返し地点ということで1時間でお知らｓ」

「30分でお願いします。」

「承知しました。30分ごとにお知ｒ」

「終了30分前だけでいいから。30分経過、これから考慮時間に入ります。持ち時間残り2時間ですとかそういうのいらないから。」

「お客さん詳しいですね。本当に当店のご利用は初めてですか？」

「初めてだよ。知ってたら来ないよ。」

「50秒、1、2、」

「ちょっと待って、ちょっと待って、何の秒読み？ ターン制なの？ 何のターン？ 俺のターンだったの？」

「ではご注文お決まりになりましたらこちらのボタンを押してｋ」

「コースだから、コースってさっき言ったから。言ったよね？」

「コースですね。かしこまりました。」

「なんで注文前からカウントダウン始まってるの？」

「えへっ。」

「えへってなんだよ！　もう、なんだよこれ。一つ質問いい？」

「はいなんでしょう。」

「ラストオーダーは？」

「ちっ(舌打ち)」

「ちょっ、おい！」

「今すぐになさいますか、それともお料理終わってからにいたしますか？」

「食べ放題コースのコーヒーじゃねえよ！ 終わってからだよ！ 終わってからに決まってんでしょ！」

「承知いたしました。ラストオーダーはお食事終わってからで。」

「終わってないでしょ！ まだ食べるから！ おかわりするから。」

「えー」

「えーじゃねえよ。さっきどんぶり交換制って案内したじゃん！ したよね？」

「え、そうなんですか？」

「だから言ったでしょ。」

「じゃあしょうがありませんね。うん、ラストオーダーはいつにしましょうか。」

「いつにしましょうかって、自由に決められるの？」

「いえ、無理です。」

「じゃあきかないで。きかないでよ。ラストオーダーは終了何分前？」

「2時間前です。」

「お願いだから本当のラストオーダーの時間教えてください。」

「それは…企業秘密です。」

「お願い教えて。」

「じゃあ30分前でいいですよ。」

「はじめから言ってよ！」

～おわり～