3. 麻酔銃? “月の側”?
気を失った狐男は、蛙男に抱きかかえられて運び込まれた。
「細っこいように見えるが、ヤッパリコイツ、重いな。……はあ、イッパツで仕留められて良かったぜ」
猟銃と、首から下げていた透明なポーチをカウンターに置く。ポーチには、赤い漆のようなもので縁取られた、バドミントンのシャトルを思わせるなにかが詰められていた。
わたしがポーチを見ていることに気が付いた蛙男が、説明してくれた。
「コレはコイツを鎮めるための麻酔弾だよ。自由に
「変化?」
「シスイはこの“月の
「“月の側”……?」
「ソコからかよ。まあ、突然“
彼と話して、わたしはむしろ混乱してしまった。
わたしの常識がなにひとつとして通じないことは明白で、気味の悪い蛙男とも話さざるを得ないらしい。そう割り切ったら案外普通に会話ができた。
彼は二階へ続く階段を上がっていった。
わたしは二人の蛙男と兎部のほうに目を向ける。カウンターに座る彼らは、キンキンに冷えたビールを飲んでいる。
一口飲むごとにぷはあと声を出す彼らは、父親そっくりだ。
お父さん、わたしのこと心配しているかな。
ばあば、腰が痛いはずなのに、今日も食べきれない量の夕飯を作ったかな。
一緒に住む父と祖母のことを思う。
母はわたしを産んでから体調を崩し、三歳のときに亡くなった。その代わり、母方の祖母がわたしを育ててくれた。父親は仕事で忙しいが、できる限り早く帰ってきて遊んでくれた。
わたしは父親に似て、幼い顔立ちをしているので、実年齢よりも下に見られることが多い。それを悩んでいたけれど、今は早く鏡を見て、わたしの顔の中に父親の面影を見つけたいと願っている。
ぼうっと家族のことを考えているうちに、目が回ったときのように気分が悪くなってきた。
脳が冷えた感覚がして、次の瞬間、わたしは意識を失った。
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