第22話 ぽよぽよにまきこまれる僕



 ウサギは一匹になると孤独で死んでしまうって聞いたことあるけど、あれってほんとかな?

 ぽよぽよってウサギ型だから……。


「兄ちゃん。なんか、悲しくなる……」

「大丈夫だ! かーくん。兄ちゃんがぽよぽよを蘇生させるからな。ほら、死なないでー!」


 猛が復活呪文を唱えると、失神してたぽよぽよAがハッと目をさました。

 えっ? どのへんが呪文かって? 死なないでーのあたりだ。


「あっ、やる気になった!」

「キュイ!」

「キュイ!」

「キュイ!」


 すると、どういうわけか、気分が爆あがりしてくのが自分でもわかる。近所のスーパーで抽選会の一等当たったときみたいなハイテンション!


「みんな、僕にまかせて! やるぞ。かーくんパンチ!」

「ギュワッ!」


 僕の右ストレートが見事にガーゴイルの顔面にキマッた。ふふふ。やったね。


「キュイ!」

「キュイキュイ!」

「ピュイ〜!」


 戦闘終わったけど、ますます爽快な気分。これか。これがぽよぽよのオートテンションか。僕、しっかり、仲間に入ってるなぁ。


「よし。ぽよぽよAは今日から、ぽよんだ」

「ピュイ〜!」


 ふふふ。さらにテンションがあがる。ぽよぽよたちの目が輝いてる。今なら魔王だって、かるーく小指で倒せそうな気がする。


 コホン、とテロップが言った。厳密にはコホンって文字が空中に浮かんだ。字幕だ。



 ガーゴイルは物欲しそうにアメちゃんを見ている。アメちゃんをあげますか?



「来るものこばまず! それが、かーくん。アメちゃん、あげようじゃないか!」

「ギギギ……」


 あれ? 一粒じゃダメか。

 ガーゴイルは魔王軍で一番よくいたモンスターだもんな。


「ほれ。アメちゃん」

「ギギギ……」

「ほれ、ほれ、ほれ」

「ギギ……」

「ほれ、ほれ、ほれ、ほれ、ほれ」

「ギュン!」



 ガーゴイルが仲間になった!



 そうか。ガーゴイルは十粒ほどで仲間になるのか。おぼえとこう。やっぱり、小さくて弱っちい子は一粒でホイホイついてくる。


「さ、みんな行くよ〜」

「キュイ!」

「キュイ!」

「キュイ!」

「弟がぽよぽよキング」


 猛、こそっと水さすなよぉ。

 とにかく、進む。

 廊下はガーゴイルの巣だ。ものすごいエンカウント率。数歩進むと遭遇する。



 チャララララ……。

 アコギーなガーゴイルが——



「仲間がやられる前に敵を討つ! それが、かーくん!」

「ギュワッ!」

「かーくんパンチ炸裂!」

「キュイ〜」

「キュイ〜」

「キュイ〜」


 ぽよぽよたちの声が「いいぞ、かーくん!」「やる〜」「カッコいい!」って聞こえる。ふふふ。


 そのままのテンションでキッチンまでやってきた。

 キッチンは——


「あっ、ミニコ!」

「ミ〜!」


 うん。キッチンもガーゴイルの山だ。床は足のふみ場がない。キッチンに入りきらなくなったのか、ミニコは一撃でガーゴイルを倒しながら、ポイポイと地下室にすててる。地下は食料品とか置いてあったんだけど、まあいいか。


「ミニコ。キッチンはいいから、いっしょに行こう」

「ミミ〜」


 これで前列、猛、僕、ぽよちゃん、ミニコだ。スゴイな。けっこう世界でも最強パーティーだよ。


「アコギーはどこだろう? それとも、また本人はいないとか?」

「二階も探してみよう。兄ちゃん、部屋に隠してるヘソクリが心配だな」


「兄ちゃん、僕のアメちゃん売って貯めたお金だよね?」

「ぽよぽよ軍団と一瞬で仲間になれるかーくんには、動物に嫌われる兄ちゃんの悲しさはわかんないよ」


「静電気体質、女神さまに頼んで改善してもらったら?」

「うーん。へたなことして、口から雷おこし吐くようになったらヤダからな。兄ちゃんは現状キープだ」


 くうっ。アメ吐き体質をここまでバカにされるとは……。

 でも、いいんだ。今の僕に怖いものはない! 仲間がついててくれるからだー!


「よし。行くよ、みんなー!」

「キュイ!」

「キュイ!」

「キュイ!」


 その勢いで僕らは二階への階段をかけあがった。ガーゴイルやゾンビソルジャー、たまに死神騎士とかに出会うけど、僕の仲間がやられる前に、倒して倒して倒しまくる。全部、ワンパンだ。


「よっしゃー! 次行こ、次!」

「キュイ〜」

「キュイ〜」

「キュイ〜」


 二階をくまなく探しまわる。家のなかがダンジョン化してるってことは、敵のボスがここにいるからだ。なんらかのイベントが発生してると考えていい。そのボスを倒すまで、僕のうちはこのままってこと。


「むうん。ゆるせん。僕の小銭ちゃんたちを使って建てた夢のマイ別荘。ダンジョンなんかにされてたまるかー!」

「おおっ、かーくんのアメちゃんがいっぱいだ」


「兄ちゃんももっと怒ってよ」

「兄ちゃん、かーくんのテンションについてけないなぁ」


「兄ちゃん、仲間じゃないの?」

「兄ちゃん、竜人だから、ぽよぽよにはなれないんだ」

「いいよ。兄ちゃんのバカー!」

「ハハハ……」


 拠点を守るっぽいドラゴン三匹倒した。ぽよぽよ集団テンションで、これも瞬殺!

 いや、殺してないけどね。アメちゃんなげれば、どれもこれも仲間になるし。


「かーくん。書斎だ。ここが一番奥の部屋だぞ」

「ここか! アコギー、出てこい!」


 僕らは一丸となって、書斎にとびこんだ。

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