第18話 アコギー商会のスパイ
えっとぉ、どこから見てもドラゴン! またはトカゲ!
人間っぽいのは二足歩行で歩いてるとこだけ? よく蘭さんの服、着られたね。
「姫さま、あの……王さまに頼まれて迎えにきました。王宮に帰りましょう」
「いやじゃ」
あっ、ふつうに人語をしゃべるんだ。むしろ、しゃべりに関しては、僕のほうが異常かも? アメちゃん出てくるしね。
「そんなこと言わずに帰りましょうよ。姫さまは今、アコギー商会に命を狙われてるんですよ?」
「そうなのか?」
「正確に言えば、姫さまを人質にして、王さまが脅迫されています」
「うーむ。それはマズイな。いたしかたあるまい。市場のようすも見られたし、今回はこれにて帰ってやろうではないか」
よかった。わかってくれた。
「わらわはサラディナじゃ。そなたは?」
「僕はかーくんです」
「ほほう。下々の者は話しながらアメを吐くのか。変わっておるのう」
「いや……これはわけがあって。吐くのは僕だけです。美味しいんですよ!」
「苦しゅうない。わらわにアメを献上いたせ」
「ははぁ」
って言った瞬間に出たやつを、両手で受けてさしだす。
妖怪アメ吐き小僧……。
「ね? 美味しいでしょ?」
「むうっ。なんじゃこの新鮮なエビのプリプリ感は? おおっ、これはマグロ……なんと脂ののったシャケじゃ。ほんのりワサビがほどよいアクセント……うーむ、ホタテか! 甘い。甘いのう」
いや、何その海鮮丼?
もはや、アメの味じゃない。
もしかして、竜くんも海鮮丼味を堪能してたのか?
食べた人の味覚に訴える味に変化する?
「美味じゃった!」
「そ、そうですか。よかったです……」
「もう一個、献上せぬか?」
「まあいいですけど。とりあえず、王宮に帰りましょう。ん?」
僕は足元を見なおした。
なんか、伸びてる。
こっ、これは! この前と同じパターン。
誰かが道のまんなかで足跡だらけになって、もみくちゃにされてる。
「この人は?」
「おお、これは、大臣のアクダイではないか。フルネームはアクダイ・カーン」と、姫さま。
裁判長も声をそろえる。
「むむむ。王宮内にアコギー商会のスパイがおるのではないかと、王と話しておったのじゃ。姫さまをさらうにしても、手引きする者がおらねば、宮殿に入れぬからのう」
つまり、悪代官……いや、アクダイ・カーン大臣がアコギーの手下になりさがってたと。
「そっか。塔からずっと、誰かがついてきてる気がしてたんだ。それって、この大臣だったんだね」
「うーむ。王宮にアコギーの配下がほかにもひそんでおるやもしれんな。じい。即、帰るぞ」
「ははぁ。姫さま。まいりましょうぞ」
僕らも姫さまを無事にお城まで送りとどけるまでついていった。
王さまは姫さまを見て、涙をこぼして喜んでる。
冤罪かけられたり、牢屋入れられたり、いろいろあったけど、お年寄りが喜んでくれたから、まあよしとしよう。
「そうか。大臣が裏切り者じゃったか。やはり、わが国が貧しすぎるからかのぅ。金を積まれて目がくらみおったか」
嘆息する王さまに、僕は提案してみる。
「この国には香辛料や岩塩など、他国に輸出すれば、立派な財源になる特産品がたくさんあります。貿易ルートを整備してはいかがでしょう? 砂漠の途中に拠点のオアシスを造営します。それから、他国と交易するという商人には、そのオアシスで援助を出します。国で出しちゃうと、じっさいに商売せずに助成金だけもらいにくる人もいるかもなので。ボイクド国は豊かな国なので、めずらしい商品は喜んで買ってくれますよ」
「たしかにそれができればよいのだが、何しろ、資金がなくてのう」
ふふふ。やっとか。ここまで長かった。やっと本業の出番が来た。ふふふふふ……。
「僕がお金を貸しましょう!」
「なんと? しかし、返すあてもないのじゃぞ?」
「オアシス建設となれば国家予算に等しい資金が必要ですからね。利息は僕だからできる超低金利で貸し付けますよ。年利3%でいかがでしょう? もちろん、単利で。返済は商売が軌道に乗りだす三年後からでいいです。それまで、利息すえおきでかまいません。もちろん、すぐに返せる額じゃないんで、三十年ローンかなぁ」
ふふふ。年利3%でも、たとえば五十億が元金なら、年間1.5億円の利息が手に入るんだ。それが毎年、三十年も。すえおき期間は無利息だけどさ。
「オアシス通行税をとれば、返済はいくらでもできますよ。そのうちには鉄道を敷いて、観光にも力を入れましょう」
王さまは考えこんでる。
姫さまや裁判長が見守る。
よし。ここらで、もう一つオマケのサービスだ。
「借り入れ記念に、アメちゃん一万粒さしあげます!」
「うむ。拠点を造ろう! 資金を貸してくれい」
「毎度あり〜」
おおっ、大型契約成立〜!
アメちゃんのおかげって気もするけどね。
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