第28話 乾杯

勇樹君は、ただ、沈黙して、目が空を見ていた。

いや、目が空だった。


私だってそうだ、勇樹君が魔族かもしれない。

というか魔族の血が流れている。


私は勇樹君を憎悪・・・


あれ?していない・・・。


文献で魔族の事は知っている。

嫌な存在。怖い存在。悪い存在。


私は勇樹君を嫌と思っていない。何故か、

だって・・・


私は勇樹君が大好きだ。


仕方ないじゃないか。だって・・・・。

大好きなんだ。


そして仲間じゃないか。


そうだ、笑ってやろう、と私は思った。

そして、


「勇樹君かっけえええええ!

 魔族かっけえええ!」


あちらの世界で使われている言葉、最上級の

誉め言葉を叫んだ。

なんと!リアスも同じタイミングで叫んだ。


美香さんが笑う。

バーボン様は苦笑い。


全員、笑顔。


そして勇樹君はハッとし自分を取り戻した。

「そうか、俺は魔族かもしれない。いや、多分

 魔族だ。これは困ったな」と冷静な口調で言う。


それでこそです。勇樹君。


「ジェニエーベル、きみはいい友を得てるな」

バーボン様はそう言うと


「君は紫の国を復興させろ。私達が出来なかった

 この大陸に生きるものすべてが手を取り合い

 進んでいける国を作れ」


と真剣な顔で言う。

そして「俺が手伝ってやる。」と。


続けて言う。

「ジヴァニアはもう母様の事で頭がいっぱいだろう。

 婆さんにジェニエーベルの為にとか言われて

 悶々としているだろうな」


「お前は母様、ウォッカに会え。」


「青の国にベルジュラック、そう、婆さんが居る。

 俺がジェニエーベルに付いたほうが面白いだろう」


「コルン君、ジヴァニアをよろしくな、

 あ、でも嫁にはやらんぞ?」とも言う。


私は、絶対嫁にしない。禿げる。と叫ぶ。

・・・心の中で。


美香さんは

「仕方ないわね!会ってあげるわ!母様に。」と。


私はハッとした。

これが、向こうの世界で知った、そう、アレだ。


ツンデレなる最強の女子!


って、待て。何故、私は美香さんと

一緒に行くとなっているのだ。おかしい。


勇樹君はバーボン様の一言に驚き、そして

「それは、私に国を興せと、復興させろ。そして

 道を歩み続けろと言うんですね。」

「自分が望まなくても、前に、歩くしかないと。

 道を進み続けることが私の出来る事だと」


バーボン様は笑う。そして言う。

そこまで真剣に考えてほしくないな。と。そして、



ジェニエーベル、人はね、やったことが、

通った所が道となるんだよ。道なんて無いよ。


目の前に道があるという人が居る。

この道はどこへ続いているのかと思う人が居る。

こっちに行けばとか、あっちに行けばとか。

違うんだ。


自分が通った所が道となるんだよ。

振り向いて初めて、「あぁ、道となっている。」

と思うんだ。


それが自分の歩いてきた道、そう

「人生」なんだ。


「ジェニエーベル、決めろ。腹をくくれ」

バーボン様は脅すように言った。


勇樹君は笑う。

「いま、バーボンさんは自分の通った所が

 道となると言った。どうするかは私が決める。

 どのように道を作るのか、というか、

 自分が歩く所が道となるならば・・・」


「私は少し悩みます。いや、多分苦悩すると思います。

 その結果、只の冒険者になるのか、それとも

 大志を抱いて王?となるのか。今はわかりません。

 だけど、考えて・・・、自分で考えて出した答えなら

 それこそが自分の道です。魔族の息子の道です。」


と言い切った。


バーボン様は笑う。

「なるほど、これは一本取られたな。じゃあ

 私に声がかかることを祈ってるよ」と。


そして私達は少し雑談をし、他愛のない話をし。

色々と考えたいと屋敷を出る。


勿論、考える場所は居酒屋である。

金貨2枚分、あっちの世界の価値にして20万円。

飲み食いすると決めたが・・・

勇樹君が1枚分、多くても。にしようよ・・・。

と言った。・・・確かに。


私達はビールらしきものを頼み、兎に角頼んだ。

そう、アリとあらゆる料理を頼んだ。


ビールらしきものが来る、そして全員で


プロージット!


あれ?なんか人数が多い。


バーボン様が何故かいた・・・・。というか、

冒険者ギルドの受付の綺麗なお姉さんもいた。


バンバン頼もうぜ!とバーボン様。

娘とこうやって飲める日が来るとわ・・・、と

涙ぐんでいる。


私もお年頃なのよ!と美香さん。

いや、論点はそこじゃない。と私。


全員、笑顔。


受付のお姉さんは何故かリアスの隣に座り

べったりひっついてプロージット。

え?いま、チューしたよね!?ほっぺに!

リアスのほっぺにさ!


勇樹君は今だけは楽しもうと言う様な感じで・・・

お前ら仕方ねえな!と言う様な感じで・・・


バンバン、そう、バンバンだ。

イチゴ白書的な何かで料理を頼みまくってる。


わからない人はググれ。

「バンバン、イチゴ白書」で。

どうやら私も酔っぱらってる。


因みにどえらく暗い曲だから覚悟しとけ。

そして全員プロージット。


こいつらバカなんじゃないかと言うくらい

プロージット。


頼むから異世界冒険ファンタジーという事を

忘れないでくれ!「五芒星の後継者」や

「黎明と終焉のダイス」のように真面目に行こうよ!

とプロージット!


バーボン様なんて

「ここに居る全員、この国のおごりだ!

 この居酒屋の食材を空にしてしまえ!」と

叫びながら誰ともわからない人とプロージット。


美香さんも

「こんな人が私の父様なんて血を呪うわ!

 でもこんな人が私の父様でよかった!」と

笑いながら、楽しそうに、プロージット。



美香さんの目が真っ赤になってて・・・、

少し潤んでいたのは私だけの秘密だ。


もう居酒屋全員巻き込んで大騒ぎだ。



そしてお開き。そして会計。


「金貨4枚になります」と会計さん。


「あ、外交管理局に請求書あげてて」と

サラッと言うバーボン様。


全員、笑顔。そして拍手。

居酒屋にバーボンコールが響き渡った。


バーボン様、かっこよく右腕を上に。

私はポイントカードをかっこよく右腕で前に。

















 





















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