第23話 素材

我々は鉱山に入る。そろそろ敵とよく遭遇する

地点に到着した。


トゥリアン鉱山は黄の国最大で最大の鉱山だった。

が、一昔前から鉱石の取れる量が激減して今では

ワイバーンの住処として有名である。


ワイバーンは数種の派生がおり

その中でもゴテリアワイバーンは属性がなく

魔法職と相性が悪い。

その為に物理職が理想である。さらに言うと

飛べない。もうこれは物理職の為にあるような

いや、いるような敵だ。


そのゴテリアワイバーンは冒険者の中では

フラバーンとも揶揄されている。

食用動物のフランゴのように飛べないワイバーン。

・・・だからか。


しかし問題がないわけではない。

逃げる。すぐに逃げる。兎に角、逃げる。

何か近づいたらすぐにいなくなるのだ。


ゴテリアワイバーンを狩る場合は

補助魔法使い、いわゆる竪琴職が必須だ。


しかしこのパーティにはいない。

そこで勇樹君の出番だ。

アカシックアーツ。

火力は低いが付属として防御力を落とし、

少しの間相手の時を止める弓職の極級スキル。


前回の戦闘で使えることが確認された。


作戦はこうだ。

勇樹君が敵に気づかれることなく

アカシックアーツを放つ。

命中したらリアスが走り捕まえる。というか

飛び乗る。

そこに美香さんと勇樹君の攻撃。


勿論、美香さんは包丁でだ。というかこの女・・・

包丁以外で戦闘する気はすでにない。

新鋭気鋭の精霊使いでもあるにもかかわらず。


下手すりゃ唯タクト、そう、「タングステン鋼」で

出来たタクトを素材に包丁を強化しそうな勢いだ。

唯タクトは多分、神器と匹敵するほどの激レアさんだ。


そういうことを平気でする女。名前は加納 美香。

こちらではジヴァニア。


多分50年後にはアホの子に使われる蔑称になるだろう。

「やーい、おまえってジヴァニアだ~。バーカ、バーカ」

と言うように。

というか私が広める。広めてやる。絶対。


ここで問題発生。と美香さん。

確かにゴテリアワイバーン、名前長いのでフラバーン。

フラバーンは確かに群れでいるが1匹は大丈夫だろう。

しかしその間に他が逃げるだろう。

それをどうするか。と真剣に考え込む。


それは風の精霊を召喚して追跡させたらいいのでは?

と私が言うと、精霊使いかぁ。雇うべきだったわね。

と美香さん。・・・お前がやれや。


そうこうしている間にウルえもんが

「いるでござる」と皆に教えた。・・・ござる。


そして討伐開始。

作戦通りに矢を放つ。5~6匹ほどいた中の

1匹に当たる。しかし、他が逃げる。

激走。ワイバーンは

ここまで、これほどまでに走れるのか、と

思えるほどに走って逃げる。爆走。


そして精霊追跡。一生懸命追跡。


矢の当たった1匹に向かって美香さんが突っ込む。

勇樹君は私に柄の長いナイフを投げ渡し

「俺は弓を使う、コルンはそれ持って突っ込め」

とわけわかんないことを言った。


私はあわてて、勢いで言われたとおりにする。

体が反応してしまった。

因みに私は生まれてきてから接近戦はしたことない。

子供のころから喧嘩すらしたことない。


私が柄の長いナイフをもって走り込んでくるのを

右足にしがみ付いているリアスが見て

「コルン!腹のあたりを思いっきり突け!」と叫ぶ。


もうわけわかんなく「わあああああああ」と声を発し

私は目を閉じながらおもいっきりそのナイフで

突き刺した。

少し遅れて矢が右目に当たる。矢の長さ半分まで

頭部に刺さっている。


そしてとどめは美香さん。下から切り上げる。

腕を切り落とし返す刀で、いや返す包丁で袈裟切り一閃。


ワイバーンは煙と共に灰になる。

核をすぐに回収し次のワイバーンへ急ぐ。


でかい岩が多い所で精霊がブンブン飛び回っている。

岩の隙間に影が見え、勇樹君が矢を放つ。


さっきと同じようにリアスがとびかかり

美香さんが突っ込みワイバーンを倒す。

そして核を回収。


もう1匹!辺りにはいない。

美香さんが「こっちよ!」と叫び走る。


人はどこまでも走れるものだ!金の為ならば!


鉱山の穴、入り口に逃げ込もうとするワイバーンが居た。

勇樹君は矢を放つ。


リアスが飛び込み、盾で殴る。そして殴る。

私も飛び込む。ナイフで突き、そして突く。

無我夢中で突きまくると、きがついたら

煙となり灰になった。


核を回収。そして勇樹君と美香さんはバイクを準備した。

私は美香さんの後ろにしがみ付く。

リアスは勇樹君と一緒に乗る。


「飛ばすわよ!」と美香さん。

「遅れるなよ!」と笑いながら勇樹君。


勇樹君と出合った頃、少し寡黙な青年と私は思っていた。

しかし、この頃は美香さんにつられてか、

凄く明るい。冗談も言う。


そうか、元々はこういった人なのだ。

ミネルヴァ様の事があったから寡黙に見えていたのだ。

勇樹君はミネルヴァ様の死を受け入れ、進むと決めたのか。


そしてそれは彼の決心となって本当の自分が出てるのか。

私は彼に期待をする。こうやってみると普通の青年だ。

いや、強いけども。おかしいくらいに弓が上手いけど。

・・・・前衛は、・・・アレだけど。


前衛?私はナイフを使い敵を倒した。前衛をした。

渡されたナイフ。あれは槍だろうに・・・。

何故私は戦えたのだ・・・。ナイフだからか・・・。


柄が短いだけで槍じゃないのか・・・。

疑問は深まる。


そして美香さんの包丁。どう見ても剣だろう・・・。

そしてあの強さ。


「そういえばね、あの包丁」と美香さんは語り掛ける。

「勇樹君のあの凄い包丁をね、合成しちゃった。

 包丁に。すごい攻撃力だったでしょ?」と。


この世界にない素材。そしてその素材はあっちの世界でも

凄いものだ。そりゃ強いに決まっているか・・・。


え・・・?あの職人が凄い切れ味と言ったのを素材に?

マジか・・・。























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