紫の国 第2章

erst-vodka

第1話 茶の席にて

青の国 城内


ルナティアはお茶を注ぐ。

「はいどうぞ」と言いながらベルジュラックに渡す。


「あの後大変だったのよ?」と微笑む。

そして続ける。


約20年前、魔王エンド討伐戦。

討伐は出来ず、封印と言う最後の手段しか取れなかった。

封印の地は紫の国。魔王の城ともども地中に封印する。


と同時に私、ルナティアをバーボンが助けてくれた。

そして同時にウォッカが、・・・私、エアストも封印したわ。

でも不完全。ルナティアから分離すらできなかった。

だから私は、半分ルナティアで半分エアスト。


魔王エンドの封印の地を

紫の国を選んだのは必然。塔の管理者だから。

でもね、アルザス王は気づいちゃった。魔王とは何かを。


だからね、攻めたの。そして滅ぼしたわ。

エンドを復活させて解かれたら、たまったもんじゃないわ。


ベルジュラック、人間はね、知らなくていいことは

知らなくていいのよ。


その話を聞きながらベルジュラックはお茶を飲む。

そして言う。


魔王エンドねぇ。

私達人間、いや、あなた、神エアストからすれば魔王。

しかし、亜人や魔者からすれば・・・エンドの方が神に近い。

・・・みんな気づいちゃいなけどね。


そしてあんた、神エアストは・・・魔王エアスト。

うちの孫たちは、そのどっちも封印しちまった。


人間が・・・、そう、亜人や魔物と呼ばれる者たちと

種族の垣根を越えて、供に歩いていけると。


でも、歩いていけなかった。

そりゃそうさ、人間はわがままだ。いつも自分中心で。

いつも人間が全ての輪を崩す。


お茶をすすりながら今度はルナティアは言う。


ベルジュラック、私はね、平和が欲しいのよ。

ずっと、ずっとそう思ってるのよ?

生まれてから3000年くらいたってるけど。


誰も傷つくこともなく、幸せに過ごせる。

でもね、この世界全員を救う事なんてできないわ、

だって、人間や、亜人、他もみんな中途半端な存在で作られたから。


だったら、私を、私を信じる者たちだけでも幸せに

するべきではない?


エンドは本当に強力。2000年前の戦いでエンドは

私の人間達に武器が使えないという呪いをかけたわ。

私は一つを使えるようにするのが精いっぱいだったわ。



ところで、ベルジュラック。ジヴァニアは・・・、本当は

バーボンの所に行ったんでしょ?

今は見逃しててあげる。でも、あの力が目覚めたら

私はジヴァニアを殺す。そう、今度こそ、ウォッカも。


ベルジュラックは空になったカップにお茶を注ぎながら話す。


ジヴァニアにはウォッカのような力はないよ。

まぁウォッカの血が流れているから「ない」とは

言いきれないけどね。


それよりもバーボンの血が濃いんじゃないか?

バーボンの方が異質だろうに。

あいつは異世界の転移者だ。


ルナティアもカップが空になり、ベルジュラックが

お茶を注ぐ。


そう、だから武器の呪いはなかった。だから

私、ルナティアを助ける事が出来た。


魔法も使えて、そしてとにかく槍の扱いが凄かったわ。

だって神器を、そう、このルナティアで保管している

ケラウノスの槍を持つことが出来たし。


そういえばウォッカは私との戦いで魔剣グラムを壊してしまって

今はおもちゃの剣で遊んでいるのかしら。あはははは。

ざまぁないわね。


ベルジュラックは机の上にあった菓子に手を伸ばしながら

話す。


ルナティア様は本当にウォッカが嫌いなんだねぇ。

おっと、エアスト様か。


そりゃそうよ、エンドの血を取り込んじゃったんだから。

それ、貴方の入知恵でしょうに。



ベルジュラックは返す。


孫には申し訳ないことをしたよ。まぁでも本当に出来るとは

思ってなかったけどね。


今度はルナティアがお菓子に手を伸ばしながら


本当はジェニエーベルもいるんでしょ?この大陸に。

あなたが何も言わず私と一緒に青の国に来たので

察したわ。


もし居たらどうするんだね。とベルジュラックはお菓子を

旨そうに食べながら言う。


ルナティアは返す。


何もしないであげるわ。紫の国を復興させてもいいわよ?

青の国の自治区だけどね。

でもね、ジェニエーベルの両親と同じようなことを

仕出かそうとするのであれば・・・・殺るわ。


物騒だねぇ、とベルジュラック。


ところで、とベルジュラックは言うと


私はここで、この青の国で何をすればいいんだい?

と続ける。


そうねぇ、とルナティアは言い


ご飯食べて、寝て、ご飯食べて、寝て、そしてご飯食べて寝る。


それでいいわ。


それを聞いたベルジュラックは


なるほどね、何もするなってことだね。


と笑いながら言った。


さてさて、早く親子の対面が出来るといいわねぇ。

私も見守っててあげるわ、何が起こるかワクワクするわ。

楽しみ。


余裕だねぇ、エアスト様は。さすがに神だ。

とベルジュラックが言うと


違うわ。と真顔でルナティア。

次の一手がどうなるか私にもわからないから手を打てないだけ。

私は後手に回るわ。・・・そう。学習したわ、20年前に。



あら、公務の時間。ベルジュラック、貴方・・・代わってよ。



嫌なこったと、ベルジュラック。

























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