この物語のヒロイン・リーナは、自分の不運を呪っている最中なのである。
体の弱い母と幼い弟を抱え、一家の大黒柱として、街の豪商に仕える通いの召使いとして働いていた。
そんな中、母が病に倒れる。その病によく効くという薬はあまりにも高額で、ヒロインは入手することができなかった。雇い主に、給料の前借りを頼み込むが、あっさりと断られる。
そして、冒頭に……。
現在、ガタガタと揺れる馬車の荷台に寝転がされているのである。身代わりとして向かわされる先には……?
2000文字のショートストーリーである。さらに、そこにお題も設定されており、それも見事なまでに踏襲されているのである。
短編なのに、世界観の構築は素敵で、緊迫感の演出は秀逸。
皆さまだって、きっと続きが気になってくるはず……。そんな読後感ですら心地いいのである。
シリーズの第1作目。プロローグにあたるであろう出会いのシーン。
きっとあなたを、魔法使いと召使いの世界へと誘ってくれることでしょう……。