サプライズ!君に幸あれ

宮川雨

サプライズ!君に幸あれ

 昼の10時45分、私は某地下鉄の駅にて幼馴染のAを待っていた。今日のために事前に作戦は立てたし、レストランも予約した。準備はバッチリだ。さて、友人Yにとって素晴らしい一日になるよう作戦を開始しよう!





 数日前私は幼馴染のA(以下Aと呼ぶ)と一緒に買い物に来ていた。今度高校生時代からの友人のY(以下Yと呼ぶ)にサプライズでプレゼントを上げるためだ。

 そのプレゼントを一緒に選び金額を折半することで、一人では手が出しにくいものを渡そうとしたのだ。それにこれならYに同じものを渡して気まずい空気になることもないだろう。

 私とAは一つのものを選ぶのに非常に時間をかけるタイプだ。どれくらい時間をかけるかというと、お互い水着1着を選ぶのに6時間くらいかけた。これは本当に誇張などしていない。休憩時間もいれるとたしか8時間かけた気がする。しかしそれがすごく楽しかった。今度はパーティドレスとか一緒に見に行きたい。


 まあそんな私たちが友人のお祝いのためにプレゼントを選ぶとなるともうお察しの通りとても時間をかけた。それでも事前にこんなのがいいかな、とは考えていたので思ったほど時間はかからず5時間ほどで済んだのだが。悩みに悩んだ末、可愛らしいグラスと華やかな時計を買うことにした。

 プレゼントを買ったらこれからが本番。どうやって渡すのかである。普通に渡してもいいのだが、せっかくなので大いに喜んでもらいたい。するとAがレストランを予約しないか、と提案してきた。

 確かにただ渡すのではなくお洒落で美味しいレストランに行き、そこで渡すというのはナイスアイディアだ。私はAの提案に乗り、どこのレストランにするか決めるため二人で喫茶店に入った。


「いらっしゃいませー」


 店員さんに案内され、席に座る。和風喫茶だったためそこでお抹茶などを頼み、ゆっくりと飲みながらスマホでレストランを調べる。もちろんレストランの食事代も私たちが折半で支払うため、お値段とレストランの雰囲気、料理の写真やサービスの良さを見ながら真剣に考える。

 すると某駅にあるホテルのレストランをAが見つけた。そこは高層階にあるレストランで景色が良く、お値段も安くはないが折半するなら問題ない。それにサービスとしてケーキのお皿にこちらが指定したお祝いの言葉を書いてくれるとのことだ。


「いいね、ここにしよう」


 料理の評価も悪くないし、駅からもそこそこ近い。そうと決まればとAがレストランの予約をしてくれる。そうしている間に私はAとYと私3人のグループLINEにこのようなメッセージを送った。


「Yへ、〇日はとびっきりお洒落してきてね」


 このようなメッセージを入れてしまうと勘のいいひとはサプライズに気が付いてしまうかもしれないが、必要なことだから送った。なぜなら今回予約したのはそこそこいいホテルのレストランだからだ。

 元々の予定ではそこらへん歩いて適当に遊ぼう、くらいの予定だったのでスニーカーなどを履いてきてしまい、Y自身が肩身の狭い思いをするかもしれないからだ。ならいっそ少し悟られてもいいのでおしゃれをしてくるようにお願いをする。

 そうしているとAがレストランの予約をしてくれたため、あとは当日の打ち合わせだけだ。当日レストランは12時に予約をし、Yには11時半に駅前に集合してもらう。私とAはやることがあるため11時に駅前に集合。

 お互いやるべきことを確認し、お茶を飲んでその日は解散した。




 そして当日、その日は快晴でこれならレストランから見える景色も素敵だろうと安心した。そして私は10時45分に駅前につき、Aを待つ。5分ほどしてAがやってきたため地図アプリで場所を確認しながらホテルまでの道のりを歩く。

 まずやるべきことはプレゼントをレストランに預けることだ。Aに事前に確認してもらったところ、ケーキを出すタイミングでプレゼントを運んでもらうことが可能だそうだ。これなら私たちがそれっぽい袋を持っていていることでYにサプライズプレゼントを感づかれることもない。

 そして11時10分に予約したレストランの前まで来たのだが、ここで一つ目の予想外の出来事が発生。なんとレストランが開くのは11時半からだ。


 これではYが来る前にレストランにプレゼントを預けることができない!少し慌てた私たちだったが、急遽予定を変更してAにはここに残ってもらい、プレゼントを預けてもらうことにして私だけYを迎えに行くことに。

 そうしてレストランから引き返して11時半ぴったりにYと合流。YはAはどうしたの、と聞いてきたが私はとっさに地下鉄じゃなくてJRで来たから現地集合するってAから連絡がきたとさらっと嘘をついた。

 ふーん、とYが言ってお互い何気ない話をしながらホテルに向かう。途中AからLINEがきて準備はできたと連絡がきた。これなら作戦通りいくかな、と思っていたらやけに神妙な顔をしたYが私に話しかけてきた。


「え、何、どうしたの?」


 あまりに言いにくそうにするため私は何かばれてしまったのかと焦った。落ち着けと心の中で言い聞かせているとYは重い口を開き、こういった。


「この間見に行った〇〇の映画の感想さ……話してもいい?」


 そう、その映画はYが面白そうだといってお互い見たら感想を言い合おうと話していたものだった。しかし何故ただの映画の感想をこんなにも言いにくそうにしていたかというと、その映画がとにかく苦しくて辛い、でも美しい映画だったからだ。


「え、私も話したい」


 Aはこの映画を見ていないため、レストランにつくまでの短い距離の中でわっと語り合った。そんなことをしながらホテルに着くと、Aがホテルの前で待っていた。久しぶりー、なんてお互い素知らぬふりをしながら挨拶をする。

 そしてホテルに入り、予約した12時になるまでソファに座って待つ。そして今日はお祝いのためにここを予約したことをYに話した。するとYの様子がなんだか変だ。どうしたんだろう、と思い聞いてみるとYは気まずげにこう言った。


「私今日そんなにお金持ってきてない……」


 その発言を聞いて私たちはびっくりしたと同時にしまった!! と思った。Yは非常にまじめな性格のため、お祝いだからここで奢って貰える、なんて思考にならなかったのだ。私たちはすぐにお祝いだし私たちが勝手にしたことだからこちらがお金を出すと説明。これは本当に反省している。

 そして予約していた時間になっていたためレストランに入る。すると写真で見た通り内装がとても綺麗で雰囲気も素敵なところだった。レストランの店員さんに予約していると伝え、席に案内してもらう。


 ここまできたらもう何もないだろう、そう思いながら運ばれてくる料理を楽しみながら話を弾ませる。そして料理がある程度進んだところで店員さんがケーキをもってきた。来たぞ! と思ったのだが、ここで2つ目の予想外の出来事が起こる。


「happy Birthday」


 誕生日おめでとう? 違う! 私たちが頼んだメッセージはそれではない! 内心焦りながらも私たちのではありません、と店員さんに伝えると、どこか焦った様子で下がっていった。

 すると横に座っていたAがこちらをちらちらと見てくる。分かってる、A。正直もう長い付き合いなんだからこっちを見なくても言いたいことも思っていることもわかる。でもいまは落ち着いてくれ。

 なんだったんだろう、間違いかなー、なんてYと話をしていると、ちょうどYが席を外した。その瞬間Aはどうしよう、と話をしてきた。しかしどうしようにもYはすぐに戻ってくるだろうし、変に動かなくても店員さんがほかの人に聞いて正しいものを持ってきてくれるだろう。そう話した。


 Yはすぐに戻ってきた。しばらく話を続けていたのだが、ケーキは出てこない。すると今度はAが席を外した。おそらく心配になって店員さんに確認をとってきているのだろう。私はそちらをAに任せてYが不審に思わないよう話を続ける。

 そう時間がたたないうちにAは戻ってきた。顔を見る感じでは問題ないようだ。そうしたらあとは待つだけだ。そして今度こそ私たちがお願いしたメッセージを添えたケーキが運ばれてきた。


『Y結婚おめでとう』


 そう書かれたケーキと店員さんが持ってきたプレゼントを渡して、私とAはお祝いの言葉を口にする。


「結婚おめでとう!」


 Yよ、本当におめでとう! 君に幸あれ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サプライズ!君に幸あれ 宮川雨 @sumire12064

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ