第41話 あなたの努力は必ずあなたが見ている。
「準備が整いましたので、二回戦を開始したいと思います! ヨウヘイ・マチダさん、ガイ・ササキさん、メインステージまでお願いします!」
二回戦の始まりを告げるアナウンスが入った。
これからより過酷で熱い戦いが始まる。
「マチダ君、どんなことがあっても私達はあなたの味方よ」
クルミは二回戦前のヨウヘイにそう声をかける。
プロフェ先生のおかげで失格にならずに二回戦に進めたとはいえ、あのリナとクルミの試合で観客に暴言を吐いてしまったことでこの試合はヨウヘイにとっては色んな意味でタフな試合になるのは間違いなかった。
だから、クルミはその言葉をヨウヘイに伝えたのだろう。
「おうよ! 皆がついてくれてるなら一万人力だぜ!」
「マチダ君、先に準々決勝で待ってて!」
「もちろん! マツリこそ変な所で負けるなよ!」
「まあ、俺は何も心配してないけど、キツイと思ったら、俺達の方みてくれよな」
「ハジメはいい事言ってくれるな! じゃあ、困ったときは頼らせてもらうぜ!」
「ヨウヘイ、頑張って!」
「ユウヤ、ありがとな! ちょっくら勝ってくる!」
ヨウヘイは俺が差し出していた拳に拳を合わせた。
そして、その後、後ろを振り返ることなく、メインステージまで一直線に進んでいった。
「「「お前の試合なんか興味ねえよ!!」」」
「「「早く負けて帰れ!」」」
だが、俺達の激励とは大きく意味の異なる言葉が会場を埋め尽くしていた。
「このブーイングは予想以上だわ」
クルミが固めていた握り拳はカタカタと細かく震えていた。
ーーー
「テメェら、戦ってもねえのに人を非難ばっかしてんじゃねえぞ!」
ーーー
あのヨウヘイの言葉の代償はかなり大きかったのかもしれない。
でも、俺はヨウヘイのあの行動が間違っているとは思えないし、思いたくもない。
確かに観客の方々には見に来ていただいてるが、だからと言って何でも言っていいわけではない。
けれども、決勝トーナメントにすらいけなかった俺が何を言っても、観客の気持ちを逆なでするだけだろう。
誰か、ヨウヘイをあの誹謗中傷の嵐から助けてあげて……
俺がそう願った瞬間、放送が入った。
「「「皆様、誹謗中傷は禁止されております。今から、度を過ぎた発言をした方は問答無用で退場して頂きますので、よろしくお願いします」」」
「あれ? この放送の声って?」
俺はどっかで聞いたことがある声でビックリした。
「ユウヤ、放送席見てみて! プロフェ先生がいる!」
シズカが言う通りに放送席に目を移すと、そこにプロフェ先生が座っていた。
「道理でどっかで聞いたことがある声だったのね」
プロフェ先生の言葉でクルミが固めていた拳が、安心感からかやわらかく解けていった。
「「「私達、教師が誰が何の発言をしたか厳重に監視していますので、どうぞお気を付けください。ただ日々のストレスの発散の為に生徒達に誹謗中傷する方は、校門から帰っていただいて構いませんので、悪しからず」」」
このプロフェ先生の放送のおかげでブーイングは鳴りやんだ。
そして、その放送後にプロフェ先生はヨウヘイに向けて、グーサインを向けた。
ヨウヘイはそのグーサインに返事するような形でプロフェ先生にお辞儀をした。
その後、ヨウヘイは観客席の方に顔を向けた。
「よろしくお願いします!」
ヨウヘイは声を大きくだし、会場の人にもお辞儀をした。
「「「マチダ、俺はお前の味方や!」」」
「「「面白い試合楽しみにしているぞ」」」
ヨウヘイのあの行動に賛同している人もこの会場にいたのだ。
ただ、さっきの状況ではヨウヘイをフォローできる雰囲気ではなかったから、何もできなかったが、プロフェ先生の放送からヨウヘイを擁護している観客が応援しやすくなった。
「では、試合を開始いたします! レディ……ファイ!!」
「マチダ君、初めまして」
「こちらこそ、初めまして! さっきの試合見させてもらいましたけど、ガイ君、めっちゃ強いね」
「マチダ君こそカッコいいよ。俺だったら、さっきのブーイングは耐えられないよ」
「確かに俺が独りだったら無理だったかもしれなかったかもな! でも、俺にはいい仲間がいるから、乗り越えるのなんか簡単だったぜ!」
ガイとヨウヘイはそれぞれの左拳を合わせて、試合がスタートした。
このガイ・ササキの特殊能力は「電撃拳」。
名前の通り、拳を固めると電気を流すことができるという能力。
この電撃拳のおかげで一回戦でハードパンチャーで名前が知られているイッポ・タダシとの乱打戦に勝てたといっても過言ではない。
最終的には、この特殊能力でイッポ・タダシを失神させて勝利した。
つまり、ヨウヘイの殴打能力倍増と同じタイプの特殊能力対決。
どちらもやはりインファイト、近い距離での殴り合いを開始した。
だが、お互いが近距離の戦いに慣れているからか、攻撃が当たらない。
どちらの拳が一撃でもしっかり顔面に入れば、失神するのは間違いない。
だが、二人のレベルはシズカ達、勇者候補のレベルにかなり近い。
当然のことながら、お互いに顔面への直撃は避けて、間に合わなそうな時はガードを作って、決定打を与えさせないようにしていた。
しかし、次第にガイの電撃がヨウヘイがガードに使っていた腕を痺れさせていたので、段々とヨウヘイが後手に回る展開になり始めた。
そして、遂にそのガイの電撃右フックでヨウヘイのガードが崩された。
「マチダ君……!!」
クルミは会場の外から叫んだ。
「よし。これで憧れのマチダ君に勝てる」
ガイはノーガードになったヨウヘイの顔面に向けて右ストレートを打ち込んだ。
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