第2話 記憶は不正確なこともあるが、間違っていない
転生してから何日か経って、徐々にこの世界の生活にも慣れてきた。
そのおかげもあり、時々おつかいとして外にも出かけている。
だが、そのおつかいで街に出た時の俺を見る住人の目線はとても冷ややかで、その目線に慣れるのにはまだまだ時間がかかりそうだった。
「皆、シズカには声をかけるのに、俺には全く声をかけてこないな」
毎度、街に出る度にそう思う。
目線だけでも「ユウヤ」に対する嫌悪感を感じる。
もし、勇者候補のシズカが俺の幼馴染じゃなかったら、「ユウヤ」はいじめられていたに違いない。
……シズカには感謝しかない。
「今日は調子大丈夫?」
「うん、もう元気。明日からの学校も問題ないと思う」
そうシズカに答えると、シズカは素敵な笑顔を俺に向けてくれた。
でも、なんでシズカはこんな「ユウヤ」に良くしてくれるのだろうかと考えてしまう。
「ユウヤ」の記憶上でも、シズカはいつも傍にいてくれていたらしいが、その理由についての記憶は持っていなかった。
「なんで、シズカはいつも俺といてくれるの?」
俺はおつかいの帰り道で聞いてみた。
「それは……ユウヤと約束したからね。」
約束? そんな記憶はない……。
改めて、この約束について記憶を辿ろうとした時、こめかみに頭痛が走った。
だから、俺は考えるのをやめて、「なるほど」と答えた。
実際は何も納得していないが。
ユウヤの記憶だけでは、まだまだ情報が足りなすぎる。
加えて、記憶というものはその人の主観なので、実際の事実とは異なっている可能性もある。
だが、それでも、『「ユウヤ」にとって、「学校」という場所は地獄だった』という記憶は間違っていないと俺は確信している。
なぜなら、「ユウヤ」に対する住人の嫌悪感をおつかいに出る度にヒシヒシと感じるからだ。
なので、学校でも同じ嫌悪感を向けられていたのだろう。
元々、「ユウヤ」には、友達が居ないわけではなかった。
だが、この10歳の特殊能力発現期を境に今までの友達は全員離れていってしまったようだ。
「俺より大変な人生じゃないか」
それが率直な感想だった。ただ特殊能力が無いだけで、友達も夢も奪われるなんて。
「でも、「ユウヤ・ヤマダ」。もう、心配するな。お前には俺、山田裕也がいる」
明日からの学校復学も楽じゃなさそうだと俺は思い、家までの帰り道を歩く。
そう考えた瞬間に心臓が大きく高鳴った。
これはワクワクによるものなのか?
それとも……?
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