第19話 聖奈ちゃんはいつも僕を見ている
職場で面白い言葉遊びが流行っている。
家だと英で栄でも永いと枝から枝から派生して打衛となる。
永田さんの家は家だなどの俺の考え方だ。
駄洒落なのか言葉遊びなのか堂々巡りなのかわからんが、そうだな……
高速と拘束は同音異義語だから速攻も同じ意味だとしたら……?
高速と拘束が同じ意味で速攻と促考する頭の良さが現れたらとしたら。
俺が牛丼屋で起きた不思議なエピソードがこれだ。
高速の拘束が光速して速攻の攻撃力になると念じた。
するといつもより牛丼が速くできた。
牛丼の出来上がるスピードが上がったのではない。
牛丼の料理そのものの要素が光速の高速の速攻の次元に到達したのである。
牛丼が一瞬で煮あがり、牛丼の仕込みがかなりというか無類の速さだ。
これは良かった。
言遊と字游の能力の使い方がかなりわかってきた。
どうやら文字に干渉して自身の都合のいい解釈をすることで現実での魔法のように使える能力なのであろう。
言遊は俺が言葉に発するとそのまま言葉通りの意味と違う、言葉遊びの意味となる。
ようするにこじつけなのだが、それでも良い方向に解釈するなら意味通りの意味となる。
文遊のほうはというと文章にして言葉遊びをするとその通りの意味と言うかそれとこじつけになる。
リンゴが落ちるはずがないと書くと落ちる確率が上がるとか、うちわで熱風を起こすことができるかもしれない。と書くとその通りになる可能性が上がる。
練習するとあんがいいけた。
字遊は文字で遊ぶことで新たな文字を誕生させることができる。
文遊は文章で遊べば文章力が上がっていく。
言遊は言葉遊びを言葉に出して言うことにより現実じみた効果を発揮する。
遊考は遊びを考えると遊び方の幅が広がる上に新たな遊びを思いつく。
なんだろう書いてて思うが、戦闘に本当に役に立つのだろうか?
戦闘に関することだが、スライムの従魔の楓が殆ど頑張ってくれる。
風の魔法を扱えるので、緑色の風を放ち、敵を切り裂く。
楓は優秀だ。万能ではないが物理攻撃もしてくれる。
体を鋭利な刃物に変化させて敵に特攻を仕掛ける。
飛び込み隊長みたいな場面もある。
俺は言遊の力で『楓はやればできる子』、『楓は最強無敵のスライム』、『楓は地上最強のスライム』と連呼している。
すると本当に楓の力が上がるように感じるだけだまだ感じるだけである。
なんとも言えない気分だ。
一応本日のガチャ結果を書いておく。
千円×5回で……UC、UC、R、R、SRと出た。
UC コレクションカード 無様なカエルの置物
説明……自宅に置いておくと魅力が僅かに下がる弱補正がかかる。カエル系等のモンスターに対するクリティカル率が上昇する。
UC 魔法カード 水生成
説明……水を生成する魔法を習得する。ただし生成できる水の量は魔力に比例する。
R 武器カード ギルティナイフ
説明……罪を背負うナイフ。罪を犯せば犯すほどナイフの業が深くなる。攻撃力+80
R アイテムカード 万有のチョーク
説明……チョークはあらゆる方向に引っ張られるが一度投げると永久に地球上を周回する。10時間後に自壊する。
なんか色々とツッコミどころのあるカードばかり出てきたな……ギルティナイフもなんか面白そうだけど……万有のチョークがなんかチートすぎない……? 永久と書いているのに10時間後に自壊するのはなんか納得がいかないがな……
カエルの置物は魅力が下がるらしいがまあカエル系統のモンスターに対して有利なるからいいほうだな。
水生成は意外と使えそう飲み水を確保するのに使えそうだ。
そして最後に引いたSRが凄かったのだ。
これがそれだ……
SR アイテムカード 戦闘学習CD
説明……ドラマCDと音楽とバーチャル音楽が入っているCD戦闘に対する恐怖心を薄れさせて、戦闘に対する場数を学習できる。
俺はこれは……と思った。試しに寝ながらラジカセに入れてみて聞いてみたらバーチャル音楽とやらはイメージが頭にすり込められるほどの戦闘の描写が入り込んでくる。
俺は一晩寝ながら聞き流していた。
次の日、俺はイメージだけなら最強の歴戦の戦士になっていた。
◇
次の日牛丼屋のアルバイトが終わって、トウカさんと帰りが一緒(方向は一緒)で帰っているとセイナちゃんに案の定ストーキングされていた。
「二人きりでズルい!! 私も混ぜて!! お願い!!」
「いいわよ。でもそんなあなたの困った顔もかわいい」
「ドエスモード!?」
僕は驚愕したトウカさんのドエス度に。
今はかなえさんからトウカさんモードだ。
「でもいいの。ひそひそ、こんなところに野良ダンジョンの気配があるわ」
「野良ダンジョンですか? この近くには公園があるけど……」
野良ダンジョンがあるとはセイナちゃんを巻き込むわけにはいかない。
聖奈ちゃんは一般人だと思う。
普通にゴブリンとかでも生命の危機だ。危険な賭けはしたくない。
だがモンスターの気配がする。
その異様な気配を感じたのかセイナちゃんが怖がっている。
「なにこの異様な気配は……!? 怖いよテンキ君」
「うん、大丈夫だから」
「怖くないのかなえさんは??」
「私は慣れてるから」
「そういえば、最近謎の未確認生命体と呼ばれる動物? じゃなくて怪物が現れて、人を喰うという事件があったってラジオでやってたけど……」
どうやらラジオのほうでは報道がなされている様だ。
「私はあんまし詳しくないけど怪物と戦うのは怖い?」
「怖いよ。そんなの非現実的だし」
聖奈ちゃんが縮こまるようにトウカさんに立ち向かう。
でもトウカさんのほうがしっかりしている。
トウカさんは歴戦のソルジャーだから、まあ普通に場馴れしている。
でも僕だって楓がいなかったら怖かったかもしれない。
数値上より普通に恐怖心のほうで体が竦むかもしれない。
でもプランがあるならモンスターも怖くない。けど一般人のセイナちゃんの前で戦えるかな?
それでもやらないと。
ゴブリンだ。普通のゴブリンが出てきた茂みから。
「トウカさん……今回はナイフですか」
「トウカさん……?」
「あっすいませんかなえさん」
「いやいいんだセイナさん私の名前はトウカだ」
「どういうこと?」
「二重人格者なんだかなえさんは」
「そうなんだ来るよ」
「僕はやる」
そうしてゴブリンの首を一刀両断した。言遊で作り出した量産型の鉄の剣で切り裂いたら一発ケーオーだった。
ならばどうする。グロイ。
「でもセイナちゃんは普通に見ているね」
「ゲームしてるから」
どうもリアルVRMMOで慣れているとかなんだそりゃ。
「こんどVRMMOやらない可愛いキャラよりリアル寄りが好きだけど」
「良いけどゲームよりこっちが好き」
「じゃあ私も闘いたい」
「魔法を覚えろ」
トウカさんが指導する。
「魔法ね、空想上の産物だけど意外と難しそう」
「私とテンキが教える」
「やる! 二人の邪魔をしたいから!!」
「ならば特訓だ少女よ」
そうして次の日放課後と仕事の後に練習が始まる。僕とトウカさんの魔法の特訓が。
聖奈ちゃんのための特訓が。
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